サッカーワールドカップ(W杯)で、6大会連続6度目の出場となる日本代表は1次リーグでH組に入り、ポーランド、セネガル、コロンビアと対戦します。各国の代表料理はどんなもので、代表選手たちはどんな食生活を送ってきたのか、各国・郷土料理研究家の青木ゆり子さん(e-food.jp代表)に紹介してもらいます。

笑顔で各国の郷土料理について話す青木ゆり子さん。世界約70カ国を渡り歩き、食を堪能するとともに自身で調理して再現している

スラブ系は酸味好き、発酵キャベツで腸内整える

ポーランド

・ポーランド共和国。東ヨーロッパに位置する共和制国家。首都はワルシャワ
・代表的な料理=ビゴス(ザワークラウト&肉・キノコの煮込み)
・日本との対戦:日本時間6月28日午後11時キックオフ

 ポーランドの料理は、ロシア、ウクライナ、ドイツなどの影響を受けながら、酸味の強いスラブ料理の特徴を受け継いでいます。欠かせないのは「ザワークラウト」。キャベツに塩を加えて発酵させた漬物で、冬になると、街中で発酵キャベツが丸ごと売られるほどです。

 ヨーロッパ北部地域は冬場、どんよりとした天気が続いて寒く、野菜がとれなくなるため、ビタミン・ミネラル補給のために漬物文化が発展したといいます。ザワークラウトの酸味は酢ではなく、熟成、発酵で生じる乳酸菌によるもの。料理に添えたり、加えたりと日頃から食べているので自然と腸内環境が整い、疲労回復にも役立ってきたのですね。まさに生活の知恵です。

典型的なポーランド料理「ビゴス」

 ザワークラウトを使った煮込み料理「ビゴス」は、餃子に似た「ピエロギ」と並ぶ典型的なポーランド料理。酸味好きなスラブ系民族の「おふくろの味」と言ってもいいでしょう。肉類の中でもよく食べられている豚肉をはじめ、2種類以上の肉と薫製ソーセージ(キルバーサ)、キノコが加わり、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素もたっぷりです。

 ポーランド人の平均身長は約179センチ。ポーランド代表は高さに加えて、強いフィジカル、速さ、技術で厳しいヨーロッパ予選を勝ち抜いてきました。3大会ぶり8度目のワールドカップを前に、最新のFIFAランキングは10位。乳酸菌効果で、本番へ調子を上げているようですね。

ベーグルはポーランド生まれ ニューヨーカー定番の朝食ベーグルは、実はポーランドのパンだとご存じですか? 古都クラクフが発祥の地と言われています。迫害を受けてニューヨークに大量移住したユダヤ系移民によって持ち込まれ、各地に広まっていきました。

手間惜しまない、西アフリカ随一の「美食の国」

セネガル

・セネガル共和国。西アフリカ、サハラ砂漠西南端に位置する共和制国家。首都ダカール。
・代表的な料理=チェブジェン(魚の炊き込みご飯)
・日本との対戦:日本時間6月25日午前0時キックオフ

 セネガルは、西アフリカ随一の「美食の国」です。フランスの統治下から1960年に独立しましたが、古代からのウォロフ王国の伝統と旧宗主国フランスの美食文化が浸透しており、料理に一手間かけることをいとわず、味付けも洗練されています。「どうせ食べるなら、おいしく」という意識がDNAに組み込まれているようで、食に対してひたすらどん欲です。

 「チェブジェン」は魚の炊き込みご飯で、セネガル人が愛し、誇りとしているオリジナル料理。まずは、魚にすりこむペースト(すり下ろしニンニク、塩、コショウ、唐辛子、パセリなどを混ぜる)を作るところから始めるなど、手間を惜しまないのです。

セネガル人が誇りとする「チェブジェン」

 海に面しているので魚がよくとれ、白米、野菜、肉など食材も豊かな風土で、生産量の多いピーナツを使ったピーナツ油を使うのも特徴です。国民の大半がイスラム教徒なので豚肉やお酒は口にしませんが、それ以外の食材を使い、さまざまな料理を作り、口にします。

 2002年日韓ワールドカップでは、開幕戦で強豪フランスを破り、周囲を驚かせてベスト8まで進出したセネガル代表。今回、それ以来の4大会ぶり2度目の大舞台に戻ってきました。相手を圧倒する強靱なフィジカルは、手間や工夫を惜しまない食習慣から作り上げられたもの。舌が肥えているセネガル代表に、計り知れない強さを感じます。

スーパーフードの宝庫、未知なる食の強さ感じる

コロンビア

・コロンビア共和国。南米北西部に位置する共和制国家。首都ボゴタ。
・代表的な料理=サンコーチョ(チキンや魚と野菜を煮込んだスープ)
・日本との対戦:日本時間6月19日午後9時キックオフ

 コロンビアは日本の約3倍の国土面積に、太平洋、カリブ海、アンデス山脈、アマゾン流域など南米のエッセンスを凝縮したような6つの地域を要する国。先住民のほかスペイン、アフリカ、中東などからの移民を含めて約80の民族が暮らしていることから多様で、さまざまな要素がミックスされた食文化を構築しています。

 同じ南米でも、ブラジルやアルゼンチンは牛肉文化ですが、コロンビアは鶏肉や魚をよく食べます。調理に対する繊細さは、日本などと比べるとやや欠けますがが、元々は先住民が食べていたというキヌアなど栄養価の高いスーパーフードの宝庫です。

 サンコーチョは中南米の他の国でも食べられていますが、鶏肉のほかに魚を使い、アボカドを添えるのがカリブ海に面したコロンビアスタイル「サンコーチョ・コロンビアーノ」。輪切りのトウモロコシを入れるのも特徴です。

キャッサバを入れるのも南米風「サンコーチョ・コロンビアーノ」

 以前は治安の悪さがクローズアップされていたコロンビアですが、最近は少しずつ改善され、観光客も増えているようです。サッカーの指導も、年代別の育成を強化。プレー面もさることながら、生活の規律を守る、仲間を尊重するなど人間形成を重視し、それが献身的で組織的なプレーにも生かされているとも聞きます。

 先日うかがったコロンビア大使館での食事会では、メインディッシュに2種類のアマゾンのアリがトッピングされており、食文化の奥深さに圧倒されました。未知なる希少食材がまだまだあるはずで、そんな食べ物で育ったスター選手が登場しそうな予感も。ミステリアスな強さを感じます。

ユネスコ無形文化遺産の和食、バランス良い健康長寿食

日本

・日本国。東アジアに位置する日本列島及び、南西諸島・伊豆諸島・小笠原諸島などから成る島国。首都東京。
・代表的な料理:寿司、天ぷら

 南北に長く、四季がある日本には、多様で豊かな自然があり、食文化もこれに寄り添うように育まれてきました。2013年には和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、その食文化が評価されています。

 代表的な料理として寿司、天ぷらなどがありますが、私が外国人の友人、食品のプロからよく指摘されるのは「麹菌の素晴らしさ」。米麹をはじめ、みそ、しょうゆなどの発酵食品を各家庭でも日常的に使っているので、おいしさとともに健康の基盤作りに役立っています。

みそと酒かすでじっくり煮込んだタケノコのみそ汁「孟宗汁」

 山形県庄内地方に郷土料理「孟宗汁」は、みそと酒かすでじっくり煮込んだタケノコのみそ汁。体に良いものがいっぱい入っている春の味覚です。

 日本は、世界一の長寿国で健康意識が高いのも特徴です。意外に保守的な諸外国に比べ、日本はチャレンジャー。新しい食材や調理法を恐れずに試し、新しい折衷料理を開発しておいしさをを追求します。世界各国見渡しても、これほど食に対して熱心でどん欲な国はありません。

 H組は強豪ぞろいですが、強敵を倒すには、日本代表も果敢に挑むしかありません。和食の強味はバランス。開幕2カ月前に監督交代という大勝負に出た日本代表ですが、食べ合わせや組み合わせといった調和、連係を生かし、フィールドでも堂々としたプレーで、世界をあっと言わして欲しいと思います。

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