いよいよ明日19日、西野ジャパンがW杯ロシア大会の大事な初戦、コロンビア戦を迎える。日本は他に1次リーグH組でセネガル、ポーランドと戦うが、3チームともFIFAランク格上の強豪だ。そこで、各国の選手はいったいどんな食事をして、この負けられない戦いに挑むのか? 日本にある各国料理店を訪れ、そのパワーの源を探ってみた。【浦部歩】

コロンビアの勝負めし

 大事な初戦の相手、コロンビアを知ろうと東京・恵比寿にある「プントプンタ」を訪れた。最初に注文したのは「エンパナーダ」。トウモロコシが原料の分厚い生地に鶏のひき肉を包んだコロンビア版揚げギョーザだ。お好みで、パクチーと長ネギが入ったオリジナルサルサソースをつけて食べるが、ほどよい辛さと香ばしい味はビールにぴったり。日本のギョーザと一緒で中身に決まりはなく、いろんなものを包んで食べるという。

 プントプンタは、03年にオープン。最初はバーとコロンビア雑貨の店だった。しかし、11歳まで同国とベネズエラで過ごしたコロンビア国籍の店主・小泉明さん(38)の母ステラさん(62)が、東日本大震災の影響で一時帰国した際、故郷の味を再認識したことがきっかけで「コロンビア料理を知ってもらおう」とエンパナーダを提供するようになった。その後、お客さんのリクエストもあり、少しずつメニューが増えていったという。

「プントプンタ」店主の小泉明さん
「プントプンタ」店主の小泉明さん

 「バンデハパイサ」は、パタコンと呼ばれるバナナチップス、赤い煮豆、スペアリブ、チョリソー、アボカド、トマト、レタスなどが入った栄養満点の一品だ。元々は、コロンビア第2の都市メデジン発祥のスタミナプレートだったが、コロンビアを代表する料理にしようと国を挙げてPR、今やコロンビア料理の代名詞となっている。「このバンデハパイサは、コロンビア代表も必ず食べていると思います」(小泉さん)。コロンビア大使館も近く、故郷の味を求めて、旅行の最中に訪れる人もいる。

コロンビアの代表料理「バンデハパイサ」
コロンビアの代表料理「バンデハパイサ」

 サッカー通の店主・小泉明さんにコロンビア戦の勝敗を予想してもらった。「ブラジル大会の時にケガで欠場したファルカオがいる今回は、さらに強くなっている。でも、日本の頑張ってる姿も見たいのでスコアは2―1でコロンビアが勝つのが理想。でもコロンビア代表は、調子に乗ると手がつけられないから前半がポイントです」。

◆プントプンタ(PUNTO PUNTA)
 営業時間は、午後5時~午前1時(日曜定休)。東京都渋谷区恵比寿南2の13の14、茶屋坂T&Kビル1階、☎03・5704・6280。アクセスは、JR恵比寿駅西口徒歩7分、東京メトロ日比谷線恵比寿駅5番出口徒歩5分。

セネガル直送の米を使用

 2戦目のセネガル料理を味わえるのは、東京・吉祥寺にあるアフリカンバー&レストラン「アフリカ大陸」だ。代表的な料理「チェブジェン」をいただいた。“くだけ米”と呼ばれるセネガル直送の粒が細かい米を、野菜と魚を煮込んだスープで炊きあげ、その上に玉ネギやパセリを埋め込んだマダイの切り身にニシン、かぼちゃ、ナスなど数種の野菜がドンと乗ったパエリアに似た一品だ。お米にはスープがほどよく染みこんでおり、日本人の口にもよく合う。

野菜と魚のだしがきいた「白チェブジェン」
野菜と魚のだしがきいた「白チェブジェン」

 「チェブはウォルフ語で米、ジェンは魚という意味です。セネガルは海に面しているので魚介が豊富。豚以外ならどんなお肉も食べますし、フランス領だった影響から食を楽しむことがとても上手」と店主のファンタみほさん(63)が教えてくれた。

「アフリカ大陸」店主のファンタみほさん
「アフリカ大陸」店主のファンタみほさん

 みほさんは家庭の事情で2~5歳の時にセネガルへ。その縁でしばしば現地を訪れ、アフリカ料理を地元の女性に教わるなどしてレパートリーを広げていき、98年に「アフリカ大陸」を開店、11月で20周年を迎える。「うちは、インターネットに載っているレシピは決して作りません。現地の人に教わったものだけを提供することにこだわっています」。

 「チェブジェン」には、「イェット」という身を発酵させた貝が入っているが「イェット」がないチェブジェンは食べないというお客さんもいるので、現地から取り寄せているという。店ではアフリカ音楽のライブも開催されており、アフリカムード満点。アフリカに旅行や仕事で行く人やJICAの職員が訪れるという。

 ファンタみほさんにセネガル戦の予想を聞いてみた。「日本は、監督交代というゴタゴタがあったから心配。何とか頑張ってほしいけど、勝つのはやっぱりセネガルかな。得点がたくさん入る方が見ていておもしろいからスコアは4-3で。その日はお店でお客さんと応援します」。

◆アフリカ大陸
 営業時間は、午後5時~午前0時(月、木曜定休)。東京都武蔵野市吉祥寺南町2の13の4、オフィスワンビル地下103、☎0422・49・7302。アクセスは、JR、京王井の頭線吉祥寺駅南口徒歩7分。ホームページはhttp://yashizake.net

肉たっぷり、ソースは家庭ごとに違い

 最後は、栃木・宇都宮市にあるポーランドカフェレストラン「スモックバベルスキ」(バベル城の竜の意味)。日本唯一といわれるポーランド料理の専門店で、ポーランド・カトビッツェで日本レストランを経営していた堀越寿弥さん(48)と妻・アグニェシュカさん(38)が13年に開店した。

「スモックバベルスキ」を経営する堀越寿弥さんの妻、アグニェシュカさん
「スモックバベルスキ」を経営する堀越寿弥さんの妻、アグニェシュカさん

 「プラツキ」は、ジャガイモのステーキにお肉たくさんのビーフシチューがかかった人気メニューだ。添えてあるマイタケは、トリュフ塩で味付けされており、ぜいたくで繊細な味わい。ポーランドではこの「プラツキ」用に何種類ものソースがあり、中にはジャムをかけて食べる家庭もあるという。キャベツの酢漬けと肉を煮込んだ「ビゴス」は、3日間かけて仕込んでいる。

ポーランドの代表的料理「プラツキ」
ポーランドの代表的料理「プラツキ」

 ポーランドから取り寄せたグース(ガチョウ)、牛、豚と3種類の肉が入っていて、ほどよい酸味が効いており日本人の口にもぴったり。「気温が低い日が多いのでポーランド人は温野菜が好き」だというが、キャベツのスープ「カプシニアーチェック」を飲んだら体も心も温まった。

 最初は、ポーランド文化を知ってもらうためのカフェを始めようとしたが、熱烈なリクエストによりポーランド料理の提供を決心。調理はアグニェシュカさんが担当しているが、だしを使って食材を煮込んだり、調理の工程を変えるなど、日本人の舌に合うように日本料理のエッセンスを加えて今のメニューを完成させた。ポーランド旅行前の情報収集や予行演習のために訪れるお客さんが多いという。

 堀越寿弥さんはポーランド戦をこう予想した。「3戦目なので、日本には2連勝できてもらって、ポーランド戦は引き分けで終わってもらうのが理想です。そうでないと、夫婦げんかになりますから(笑い)」。その横で、アグニェシュカさんが「レバンドフスキがいるからポーランドは強いね」と自信満々な表情を浮かべていた。

◆スモックバベルスキ(SMOK WAWELSKI)
 営業時間は、午前11時30分~午後4時(日、月曜定休、一部祝日)。栃木県宇都宮市西川田5の27の10、☎028・645・2044。アクセスは、東武宇都宮線西川田駅徒歩7分。ホームページはhttp://smokjp.html.xdomain.jp/

(2018年6月18日付日刊スポーツ紙面掲載)

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