高校女子サッカーのインターハイで5度、全国高校選手権で3度の優勝回数を誇る強豪・日ノ本学園(兵庫)は、技術的なトレーニングに加え、選手の食事意識を改善し、成長期に必要な体作りを推進している。全国各地から集まる部員50人はほぼ全員寮生活。3年前から神戸女子大学健康福祉学部健康スポーツ栄養学科の坂元美子先生の栄養サポートを受けるようになり、2年前からはマルサンアイ株式会社の豆乳を飲むようになった。エネルギー不足が取りざたされる高校生の女子アスリートはどういった食事が好ましく、どのような栄養素が必要なのか。また豆乳の継続摂取の有効性はどういったものか、坂元先生、日ノ本学園サッカー部の田邊友恵監督、マルサンアイ株式会社の小川静香氏(公認スポーツ栄養士)に話し合ってもらった。

専用グラウンドで汗を流す日ノ本学園サッカー部員
専用グラウンドで汗を流す日ノ本学園サッカー部員

摂取エネルギー量が足りずケガ人も多かった

-坂元先生に栄養サポートを依頼したきっかけは

田邊 ケガが多かったんです。プレーできない選手が1割程度いる状態でした。「食事が原因かな?」とも思っていたので、坂元先生に指導をお願いしました。

坂元 食事調査の結果、摂取エネルギー量が全く足りていなかったので、まずは「ご飯を食べなさい」という指導から入りました。

田邊 女子は「太るといけない」と思って、白米を食べないんです。お菓子や菓子パンは食べたいから、米で調整する選手が多かった。坂元先生に、それではエネルギー量が足りないというデータを客観的に示してもらったことで選手も納得し、私も「安心してご飯を食べなさい」と言えるようになりました。

「以前はケガ人が多かった」と振り返る日ノ本学園サッカー部の田邊友恵監督
「以前はケガ人が多かった」と振り返る日ノ本学園サッカー部の田邊友恵監督

坂元 これだけ運動しているんだから、ご飯は最低でも1膳、食べられるなら2膳食べて欲しいところです。

-選手たちが必要な1日のエネルギー量はどのくらい

田邊 朝練やウエイトトレーニングなどの自主練習を含めると1日合計4時間ほどトレーニングをしています。

坂元 食事調査と同時にエネルギー消費量の測定も行っていますが、1日3100~3200kcal消費しています。これは、日本人の食事摂取基準2015年版(厚生労働省)で示されている、最も活動量の多い男子高校生の必要エネルギーと同じくらいの数値です。非常に激しい運動をしているのにご飯をしっかり食べなければ、成長に必要なエネルギーが足りず、体を作ることが難しくなります。

「ご飯をしっかり食べないと体を作れない」と話す神戸女子大学健康福祉学部健康スポーツ栄養学科の坂元美子先生
「ご飯をしっかり食べないと体を作れない」と話す神戸女子大学健康福祉学部健康スポーツ栄養学科の坂元美子先生

-寮のおかずは十分か

田邊 少しずつですが、食事の内容を良くしてもらっています。最初は油ものが多くて「茶色」の食卓だったのが、品数(副菜)が増え、彩りも良くなりました。選手が自分で食品を購入して寮の食事にプラスするようにもなりました。納豆やキムチ、ヨーグルトといった発酵食品、半額になったマグロの刺身を加えてます。近くのスーパーの特売セール「火曜市」に選手は敏感です(笑)。

坂元 食事内容もかなり良くなりましたよね。

田邊 お金をかけるところはどこなのか、スパイクやジャージではなく、体作りの根本である食事であると分かった選手が、結果的に試合にも出られるようになります。今ではうれしいことに、動けないほどのケガ人がいなくなったんです。かつてこんなことはありませんでした。選手の食意識が上がり、寮食の業者の方も協力してくれたし、トレーナーも良かれと思うことは何でもやってくれたので、そういった相乗効果だと思います。

坂元 選手たちが自主的に工夫するようになったのは素晴らしいですね。運動量が多いので、どうしても寮のご飯だけでは足りません。そこで、手軽に高い栄養価がとれるもの、常温保存が効くマルサンアイの豆乳も飲んでもらうことを提案しました。

日ノ本学園サッカー部の選手が摂取するマルサンアイの調製豆乳
日ノ本学園サッカー部の選手が摂取するマルサンアイの調製豆乳

料理せず手軽に飲める、水分補給にもなる

-豆乳のメリットは

坂元 料理しなくていいこと。水分補給にもなり、練習後すぐにとることができます。

小川 最初は共同研究という意味合いもあったので、全員に3カ月間、調製豆乳を1日1本飲んでもらいました。その結果、酸化ストレスマーカ(尿中8-OHdG)の値が下がりました。選手にとって運動すること自体、体に大きな負担をかけています。体のケアは食事からしていくことも大事なことです。

坂元 トレーニングによる酸化ストレスが高いということは、体を酷使していることに間違いありません。酸化ストレスによる炎症状態を長く放っておくと、ケガにつながりますので、練習直後のケアの手段の1つとして、豆乳を活用してもらっています。

「全員に3カ月間、調製豆乳を1日1本飲んでもらいました」と話すマルサンアイ株式会社の小川静香氏
「全員に3カ月間、調製豆乳を1日1本飲んでもらいました」と話すマルサンアイ株式会社の小川静香氏

-豆乳の栄養価は

坂元 まずは大豆イソフラボンですね。女性ホルモンに似た構造をしており、女性ホルモンが不足した状態で、同様の働きをしてくれます。ファイトケミカルとして抗酸化作用もあるので、女子アスリートにとって都合よく働いてくれて、アスリートにとってマイナス要素にはならないと思っています。

田邊 食事でしっかり栄養をとるようになって、豆乳も飲むようになって、女性として健康な状態になったのかもしれませんが、中には胸やおしりが大きくなったと、違和感が出た選手もいました。ただ体の変化が起こりやすい時期と重なったためということも考えられます。また、「生理がない方が楽」と思っている選手もいます。生理が来ないという異常な状態を普通だと思ってしまっているなら、それは良くないことです。

坂元 体が女性として「正常」になったのを豆乳のせいだと思ってしまわないために、小さい頃から飲んでおくことが必要かもしれませんね。

-夕食以外の食事は?

田邊 朝食、昼食(弁当)には課題があります。朝はパンが多いんです。お弁当もおかずを作っている子もいますが、ご飯にふりかけだけ、という子もいて意識の差が激しい。

坂元 豆乳を飲んでもらっても、まだ全体的にエネルギーが足りない選手もいますね。

田邊 みそ汁も飲ませたいのですが、自分たちでは作らない。

小川 弊社の鮮度みそ(ボトルタイプの液状だし入りみそ)はどうですか?乾燥ワカメなどの具材を入れて、みそを加えてお湯を注ぐだけでできますよ。野外の活動時でもお湯を持参すれば外でも飲むことが出来ます。また、ボトル自体は90日間の常温保存が効くので便利です。

みそを加えてお湯を注ぐだけでみそ汁が作れるマルサンアイの「香りつづくとろける味噌」
みそを加えてお湯を注ぐだけでみそ汁が作れるマルサンアイの「香りつづくとろける味噌」

田邊 そんな便利なものがあるんですか?いいですね。食堂に給湯器はあるのですぐに飲めますね。早速試してみます。