光老化を食で防ごう! 皮膚科学の権威で光老化啓発プロジェクト委員でもある川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士の園部裕美さんが対談を行いました。酸化を防ぐ食材とは? 日焼け対策にオススメの食事とは? 「光老化啓発プロジェクト」×「アスレシピ」コラボならではの話がたっぷり飛び出しました。

川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士・園部裕美さん01

抗酸化作用の成分が重要

川島 今回は食と光老化ということで、アプローチしていただいたとのことですが、どういう栄養が大事なのですか?

園部 私は抗酸化物質が重要だと考えています。アスリートは日頃から酸化ストレスにさらされています。だからビタミンA、C、Eを基本にして、ポリフェノールなどを多くとりましょうと話をします。紫外線も皮膚に炎症を起こして酸化ストレスにつながるとお聞きしました、抗酸化物質は大切だと思います。

川島 抗酸化作用のある成分がポイントですね。

園部 また、野菜とか果物に含まれる「ファイトケミカル」と呼ばれる成分をとってくださいと選手に話をします。ファイトケミカルとは、紫外線や害虫など植物にとって有害なものから体を守るために作りだされた色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分のことです。ファイトケミカルは必須栄養素ではないものの、体にとって良い作用をするため、健康を維持するためにはぜひ摂取したい重要な成分です。色がはっきりした野菜や果物に多く含まれます。これから夏にかけてはとりやすい。その中からビタミンA、Cが多い野菜をを心がけてくださいと言います。

川島 春先だとどんな食材がいいんですか?

園部 菜の花や芽キャベツはいいですね。ビタミンCもカロテンもすごく多い。アスパラガス、冬野菜ですがブロッコリーもいいですね。アミノ酸とシステインからできる「グルタチオン」も抗酸化作用がある成分です。アスパラ、ブロッコリー、ブロッコリースプラウトなどに含まれる「スルフォラファン」をとると、グルタチオンを作ってくれるそうです。

川島 なるほど。

園部 ブロッコリースプラウトはスルフォランが豊富に含まれて値段も安いですし、農薬の心配も無い。生で食べられるので、サラダとかにいいですね。カイワレ大根よりも辛くないですしね。

川島 生がいいのが分かるんですけど、煮る、焼く、蒸すといろいろな調理法で栄養素の吸収は大きく変化するんですか?

園部 ビタミンCは水に流れてしまうので、ブロッコリーはグツグツゆでると栄養素が落ちてしまいますね。ゆでたりするならば、芋類がオススメです。ビタミンCがでんぷんに守られているので、加熱しても大丈夫です。サツマイモとかもいいですよ。

川島 僕は蒸し野菜を食べながら、一緒にアルコールも摂取するんですが(笑い)。

園部 先ほど説明させてもらった「グルタチオン」はアルコールにもいいんですよ! アスパラガスに加えて、ブロッコリースプラウトもサッと食べてもらえたら。お父さんにもオススメですね。

ビタミンDを意識的に

川島眞東京女子医大名誉教授

川島 今回考えていただいた「サケとパプリカのバルサミコ炒め」。これはおいしそうですね。

園部 まず抗酸化作用を考えて、ビタミンC含有量がとっても多いパプリカを使いました。野菜ではトップクラス。アスリートに積極的にとってほしい。あとビタミンDが豊富なサケとマイタケが入っています。

川島 それはいいですね! 言い忘れたんですけど紫外線の功罪で、功の部分もあるんです。日に当たることで骨の成長に大事なビタミンDを皮膚で作ってくれる。でも非常に短い時間で十分なんです。日本なら顔と手の甲に1日15分も太陽光線を当てればいい。

園部 この1食でビタミンDは、日本人摂取目安の6倍くらい入っています。日焼け止めをしっかり塗って紫外線対策をして、食事から十分なビタミンDをとる。ビタミンDは食事から毎日コツコツとってほしいですね。

管理栄養士・園部裕美さん

川島 そうなんですね。魚のサケが優れているという点は他にもありますか?

園部 サケ、特に紅ジャケはアスタキサンチンという抗酸化成分が多く含まれているんです。エビやカニの甲殻類など赤い色のものに多く含まれ、とても抗酸化力が強いんです。

川島 食べ合わせもいいんですね?

園部 ビタミンAもDも脂溶性なので、油と一緒にとった方がいいですね。今回は揚げ焼きのような形で油を使っています。

川島 なるほど。

園部 それと味付けの部分ですが、バルサミコ酢は普通の米酢に比べてポリフェノールが豊富なんです。それも抗酸化にいい。あまり普段使わない調味料かもしれませんが、コクが出るのでいいですよ。

サケとパプリカのバルサミコ炒め
サケとパプリカのバルサミコ炒め

川島 すばらしい! アスリートとしての栄養と光老化対策にも大切な栄養の両方を兼ね備えた料理ですね。ビタミンDも抗酸化物質も最高の日焼け対策ですよ。ビタミンDリッチな食事を是非勧めていきたいですね。

日焼け止めを塗るとビタミンD不足になると言う間違った情報の発信にたいして、こういう食事をちゃんと取ることで十分だ、食事からの摂取が大切だというメッセージを出していきたいです。

ニキビにも日焼け止めは大丈夫

園部 アトピーや肌に擦り傷があった場合は、日焼け止めは塗っても大丈夫ですか?

川島 まずは傷を治す、アトピーを治すという発想でいいと思います。アトピーだから塗れないということではなく、その症状をいかに早く治療して良い状態にしていくかを優先します。傷も同じで、傷が治ってから。傷があるから、その部分が日焼けしやすいとか、シミになりやすいということもありません。

園部 日焼けした肌が炎症を起こして、赤くなっていた場合はどうですか?

川島 これもまず日焼けの炎症を治さないといけないですね。炎症を抑えるために肌を冷やします。炎症がひどい場合はステロイドホルモンを1日ないしは2日、たっぷり塗る。早く炎症を抑えることで、シミにつながらないので徹底的に早く治すことが大事です。

園部 ニキビはどうなんでしょうか? 思春期に多いできものですが。塗ってもいいですか?

川島 ニキビは大丈夫です。逆に太陽光がニキビを悪化させることもあるので日焼け止めの使用を勧めます。良くなってから塗りなさいという指導はしません。これは化粧も一緒なんですよ。皮膚科医はずっとニキビやアトピーの患者さんに化粧させると良くないと言ってきた。でもね、化粧しない方がストレスになる。化粧をした方がニキビやアトピーも良くなったということの方が多い。僕は病的な肌の人に化粧しないでくださいなんて絶対言わない。

園部 こころの部分はかなり大きいのですね。そういえばシミ、シワを治せる方法があるとお聞きしました。それはどういう内容でしょうか?

川島 美容医療ではレーザーや注射薬でシミやシワの治療も可能です。ただ自費診療になるので、それなりの金額になってしまいます。だからこそ日焼け止めによる予防が1番大事なんです。食事で抗酸化成分をとるのはとても大事ですね。

園部 シミ、シワができても簡単に治せるわけではないんですね。

川島 ビタミンCの入った化粧品、化粧水、乳液を使うことも予防の観点から大切です。

園部 なるほど。ビタミンCを肌からも取り入れていくんですね。

川島 それから比較的に浅いシワであれば薬用化粧品が3成分くらい承認されています。美容医療に抵抗がある人には使っていただけるかなと思っています。

園部 食事も化粧品も改善には何が必要で、予防には何が大切かを理解することが大事なんですね。しっかり栄養表示や成分表を見て、光老化への意識を高めていきましょう!

>> 春だからこそ、紫外線対策が必要なワケ

川島眞(かわしま・まこと)

1978年東京大学医学部卒業。東京女子医科大学皮膚科主任教授を経て、現在は東京女子医科大学名誉教授、医療法人社団ウエルエイジング総院長。専門はアトピー性皮膚炎、ウイルス感染症、美容医療。日本美容皮膚科学会前理事長、日本香粧品学会前理事長、日本コスメティック協会理事長、NPO法人皮膚の健康研究機構副理事長。

園部裕美(そのべ・ひろみ)

管理栄養士。スポーツ栄養コンサルタント。予防医学士。
病院栄養士、飲食店勤務を経て、陸上実業団チームの専属栄養士に。現在はフリーとして、トップアスリートらの栄養サポートや指導を行っている。スポーツの世界だけでなく、すべての人に共通する「予防栄養」を分かりやすく、実践しやすく伝えるため、栄養コンサルティングやセミナーを実施。日本人として和の食事を大切にしてほしいとの思いと、腸の力をつけることを重要視していることから、みそや納豆を手作りするなど、糀(こうじ)や醤(ひしお)の発酵食ワークショップも開催している。