牛乳は給食でも出されることが多く、なじみもあるので身体に良いイメージが強いでしょう。ところが「牛乳は身体に悪い」と言う人もいるのです。ちょうどこの原稿を書いている時、ある選手から「牛乳は身体に悪いって、チームの栄養士さんに言われたんだけど…」という連絡がありました。

 果たして、牛乳は身体に良いのか悪いのか――。今回は、牛乳についてお話しします。

カルシウムの吸収は小魚よりも高い

 これまでのコラムでも紹介したように、牛乳はタンパク質やカルシウムが多いのが特徴です。飲むことで筋肉や骨、血液が作られます。プロ選手がサプリメントのプロテインを牛乳に溶かして飲むなど、身体を作るために取り入れていることからも、成長や身体づくりに必要な栄養素が多く含まれているということは、みなさんご存だと思います。

 一方で、牛乳がダメだという人の理由は「リンが多いので、カルシウムの吸収を阻害する」「鉄欠乏性貧血が起きやすい」というものから、「牛が飲むものを人間が飲んでも吸収されない」などという科学的根拠がないものまであります。

 確かに、カルシウムの吸収率はリンが関係しています。牛乳100gには、カルシウム120㎎、リン100㎎が含まれますが、吸収には、乳糖やアルギニンなどのアミノ酸なども関係し、吸収を高めます。そのために、カルシウムの吸収は乳製品が50%と高く、小魚や野菜はそれよりも低い20~30%程度なのです。

 どうしてもリンが気になるようであれば、牛乳のリンを気にするよりも、カップ麺や甘い炭酸飲料、加工食品などリンを多く含む食品を控えるなども大切です。

豆腐白玉のいちごミルク
豆腐白玉のいちごミルク

生乳100%、できれば低温殺菌を

 そして牛乳は「本物の牛乳を選ぶこと」がポイントです。

 原材料をチェックして、必ず生乳100%のものを選びましょう。その上で、普通牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳などを選びます。よく「低脂肪は身体に悪いの?」と聞かれますが、大事なことは、脂質がどのくらい含まれるかの前に、原材料が生乳だけなのか、それともいろいろなものが混ざってできたものなのかを見極めることです。

 高温殺菌牛乳よりも、低温殺菌牛乳を選んだ方がいいですが、こちらは少し値段が高くなるため、できる範囲で構いません。

 商品を選ぶ際、「値段が高いと身体に良いのでは?」と思いがち。特に、大事な試合前や疲労感が強い時に、いつもより値段の高い商品を買うことがあるかもしれませんが、値段が高いから良いものとも限りません。これは牛乳に限らず、他の食品にも言えることでしょう。

 さて、牛乳が身体に悪いと言われた選手の話に戻りますが、この選手はプロとして活躍している選手です。

 「小さい頃からずっと牛乳は飲んでいて、骨折は一度もないし、ケガもほとんどない」「牛乳が悪いというなら、学校給食の牛乳も全力で阻止してください」と笑って、チームの栄養士に返したようですが、同じ管理栄養士という立場からいろいろ考えさせられる会話です。

 エビデンスに基づき、年齢などの要因を考慮したアドバイスは大切ですが、選手の経験で得られたものは無視できない要素。もちろん経験だけでもダメですが、この続きは次回のコラムにてもう少し詳しくお話ししたいと思います。