今回もB判定、ビフィズス菌は…

約半年間、ビフィズス菌配合のヨーグルトを食べ続けたにもかかわらず、私の腸内フローラは1度目と主要なところがほとんど変わっていなかったのです。

編集者の検査結果から
編集者の検査結果から

総合判定は「B判定」で変わらず。AでなくBである最たる理由は、健康長寿菌判定でビフィズス菌とフィーカバクテリウム属の2種とも不足気味だから。しかも、最も意識してきたビフィズス菌が前回と全く変わらぬ数値で要改善のマークがついています。

編集者の検査結果から
編集者の検査結果から

今回の再検査で恐れていたのは、「年末年始で腸内環境が乱れたのではないか」ということでしたが、指摘項目はそこではなく、「ビフィズス菌が足りない」という前回と同じ結果。「あれだけ意識してきたのに全く変わらないとは…」。ビフィズス菌の摂取量が足りなかったのか、増やすためにはどうしたらいいのか…。がく然としながら、「結局、腸が9割 名医が教える『腸』最強の健康法」の著者である消化器専門医、犀星の杜クリニック六本木の川本徹院長をたずねました。

消化器専門医の川本徹院長の見解

川本院長はまず一般論として、腸内細菌叢の話をしてくれました。

川本院長 腸内細菌叢は生まれてから幼少期までに決まるので、急激には変わりません。日本人は欧米人に比べて細菌叢の多様性があり、ビフィズス菌の数も多いといいます。世界基準と比較すると、飯田さんのビフィズス菌の割合はそこまで少なくないと思うので、悲観しなくても良いと思います。腸内環境は2週間、整うような食事を続ければ変わりますし、10週間以上約3カ月かけて実施すれば、かなり改善が見られます。腸内環境が悪い人が生活を整えれば、結果はてきめんに表れますが、もともとある程度、意識した食生活を送っていて特に悪いわけでない人が、急激に改善をするのは難しいですね。

犀星の杜クリニック六本木の川本徹院長
犀星の杜クリニック六本木の川本徹院長

その上で、私の結果を見て、次のように見解を述べました。

川本院長 年末はどうしても甘いお菓子やケーキが増えるし、豪華食材ばかりでタンパク質は動物性に偏り、アルコール量も増える。一時的に飯田さんの腸内環境は乱れた可能性がありますが、普段、意識した食生活をしていたから、このB判定の状態でとどまったのかもしれません。年末の前にはもっと良かったかもしれないし、今検査をすれば、もう少し良い評価が出るかもしれません。確かに言えることとしては、常に腸内環境を意識した生活を送っていると、体調を崩したり、一時的に偏った食事をしたりすることがあってもすぐに戻りやすいということ。だから、日頃から整えておくことが大切なんです。

「不足」を自覚しないことの危険性

この2回の検査で、「ビフィズス菌不足」の指摘を受けた私ですが、だからといって日常生活に困ることはないため、不足に対して無自覚です。川本院長は「それだから危険だ」と指摘します。

川本院長 ビフィズス菌は悪玉菌の増殖を抑制し、がんの発生を予防したり、免疫力をつけたり、アレルギー症状を緩和したりします。現在、がん患者が増えていますが、そのような人たちの腸には悪玉菌が多いのかもしれません。しかも、ビフィズス菌は加齢とともに減り、70~80歳になるとほぼゼロになるとも言われています。中高年以降は相当意識しないと、保つことができません。

食べてきたヨーグルトは適量だったのか

意識しても増えなかった私の腸内のビフィズス菌。もしかすると、私がこの半年間、食べてきたヨーグルトは適量だったのかという疑問も残ります。

川本院長 ヨーグルトに関しては、食べる量が少なかった、そもそも添加されているビフィズス菌の量自体が少ないものだったということも考えられますが、摂取する時間帯によって胃酸で殺され、腸に届いていないことも考えられます。特に食事の前後は胃酸の分泌が多いため、腸活のためにヨーグルトを食べるのには適していません。食後3時間の食間、いわゆるおやつの時間に食べるのがベターです。

これを聞いて、一気に腹落ちしました。私が食べていたタイミングは朝食の最後。つまり、胃酸の分泌が激しいときのため、せっかく摂ったビフィズス菌は胃のあたりで消えていたのかもしれません。ビフィズス菌を効果的にとるなら、とるタイミングも意識しないといけないのです。

ヨーグルトは目的によってとるタイミングが重要

川本院長 例えば、カルシウムやタンパク質補給を目的とするなら、食事の中でOKだし、ダイエットを目的とするなら副交感神経が優位となり、胃酸の分泌が増える寝る前の「夜ヨーグルト」も効果的です。しかし、菌を腸内(ビフィズス菌の場合は大腸)に届かせるためには、胃酸分泌の少ない食間が最も良いタイミングです。

そのほかビフィズス菌を増やす施策として、川本院長は水溶性の食物繊維(ネバネバ系の野菜、ヤマイモ、海藻類、ゴボウやサツマイモなどの根菜類、納豆など)をとることを推奨しました。これらの水溶性食物繊維は便秘改善にも効果があります。

一方で、同じ食物繊維でも不溶性のもの(オートミールなどの穀類、大豆、キノコ類など)は摂りすぎるとおなかが膨れてしまうため、特に便秘がちな高齢者には逆効果だといいます。一般的には良いとされるものが、人によっては良くないケースもあるのです。

外から摂取した菌は腸内に定着しづらく、腸内環境は食べたものや体調などで日々変化します。だから意識して継続すること、目的によって食生活を習慣づけることが必要だということが、改めて理解できました。

自分の腸内環境を知ることから始めよう

2回の検査を通して、自分の腸内がどのような状態でどのように変化するのか、わかりました。腸は免疫機能の多くを司る臓器であり、脳やメンタル、病気との関連性も広く知られるようになってきましたが、自分の腸内の状態を正しく知らない人が大半で、具合が悪くなってから、症状が出てから医者にかかる人が多いのも実情です。川本院長は「将来の自分を考えて、予防のために、病気になる前に、自分の状態を知っておくことが大切だ」と多くの人に検査を受けて欲しいと啓蒙を続けます。

最後に川本院長は「継続しないとあっという間にゼロになってしまいますよ」と穏やかな口調ながら厳しい言葉を発していました。今回の再検査で仮にA判定が出ていたら、劇的にビフィズス菌が増えたという結果になっていたら、私は「こんなものか」と満足して気を抜いていたかもしれません。このB判定はその戒めとして、「気を緩めるな」という忠告なのだと受け止めています。