<食べ物の効果的な組み合わせ>

「緑黄色野菜に多く含まれるβカロテンは、油で炒めると体への吸収率が高まる」など、食べ物は組み合わせによって効果的な食べ方があります。どうせ食べるなら、栄養を余すことなく摂らなければ損。秋が旬のサンマ(秋刀魚)は、どのような食べ方が良いのでしょうか。

どうせ食べるなら栄養を余すことなく

秋の味覚サンマは、良質な脂質(不飽和脂肪酸)であるEPA、DHAなどが多く、タンパク質も多く含みます。日照時間の減る冬に不足しがちなビタミンDや、ビタミンA、Eのほか、カルシウムや鉄といったミネラルも含み、子どもからお年寄りまで食べていただきたい食材です。

サンマといえば、塩焼き。そのサンマの塩焼きには、大根おろしやすだちを添えることが多いですね。脂がのっておいしくなる分、脂質が多く味がしつこくなるサンマを、大根おろしやすだちでさっぱりさせるだけでなく、一緒に食べることで、実は様々な効果が期待できるのです。

サンマに大根おろしとすだちの組み合わせは、栄養学的にも理にかなっている
サンマに大根おろしとすだちの組み合わせは、栄養学的にも理にかなっている

大根おろしに消化を助ける3つの酵素

大根おろしには、ご飯などに多いでんぷんを分解する酵素のアミラーゼ(ジアスターゼ)、タンパク質を分解する酵素のプロテアーゼ(ステアーゼ)、脂肪を分解する酵素のリパーゼが含まれており、タンパク質や脂質の多いサンマや、一緒に食べるご飯の消化を助ける作用があります。胃もたれや胸やけを防ぐので、夕食が遅くなる人や逆流性食道炎の方にもおすすめです。

ただ、これらの消化酵素は熱に弱いため、加熱した大根ではなく、生のまま使うことが重要です。すりおろすことで細胞壁が壊れるため、効率良く摂ることもできます。より効果を発揮させるには、大根おろしにするのが最適なのです。

加熱せず、生のまま皮ごとおろす

大根おろしの辛味成分イソチオシアネートには、殺菌、解毒、抗酸化、抗がん作用などがあります。大根の皮に多く含まれるため、辛味が得意な人は皮ごとすりおろす方が、多くのイソチオシアネートを摂取できます。イソチオシアネートは揮発性ですので、すりおろしてから20分ほどすると辛味はなくなります。辛味が苦手な人や子どもは、少し時間がたってから食べるといいでしょう。

ちなみに毎度、大根をおろす手間が面倒だという方は、チューブなどで市販されている大根おろしを利用しても良いでしょう。水洗いする、しないにもよりますが、日本食品標準成分表2020年版によると、カリウムは8割、ビタミンCは6割残り、他の栄養素はあまり変化ありません(酵素はデータなし)。また、すりおろして冷凍したものには多くの酵素が残るため、一度にまとめてすりおろし、冷凍しておく手もあります。

すだちが鉄やカルシウムの吸収率を高める

すだちには、酸味の成分であるクエン酸やビタミンC(アスコルビン酸)が含まれます。クエン酸やビタミンCは 鉄やカルシウムと結合(キレート化)し、水に溶けやすくして吸収率を助ける働きがあるので、サンマに含まれる鉄やカルシウムをより効率良く摂ることができるのです。

魚料理の難点は、食塩やしょうゆといった調味料が合うため、塩分の摂取量が多くなりがちなことです。すだちの酸味によって食塩やしょうゆが少なくても食べやすく、減塩効果も期待できます。これまですだちを「飾り」と思って手を付けなかった方、ぜひ一緒に食べましょう。かぼすゆずレモンなど他の柑橘類、もしくは市販のレモン汁や冷凍レモンでも同様の効果があります。

サンマ以外の青魚も同じ組み合わせに

サンマの塩焼きに大根おろしやスダチを添えるといった定番の食べ方は、理にかなっています。何も添えずにサンマを食べていたという方は、ぜひ栄養面でのプラス効果を期待して、大根おろしやすだちと一緒に食べてみてください。

サンマ以外の青魚、例えばイワシやサバに大根おろしとすだちの組み合わせも原理としては同じです。ムニエルや竜田揚げ(唐揚げ)にかけても(みぞれがけ)問題ないでしょう。

管理栄養士・今井久美