まだ暑さの残る9月中旬、明日山家は熱中症対策をしながら過ごしています。高2のハヤタはインターハイで優勝できなかった悔しさをバネに練習を積み、今月行われた新人戦の個人戦(シングルス)で優勝。来月の団体戦で2冠を狙っています。しかし最近、試合や練習中に疲れを感じることがあり、不安になっています。

小5の妹エミは、泳ぐ楽しさを見つけてからは、食事をよく食べるようになりました。この夏で身長も伸び、体力も付いてきています。父キュウジさんは、「子どもたちに負けてられない」とスポーツの秋ということで、仕事前後に自宅でできるトレーニングに取り組み始めました。

9月の明日山家は、疲れやすさの原因のひとつ「貧血対策」に取り組みます
9月の明日山家は、疲れやすさの原因のひとつ「貧血対策」に取り組みます

貧血になると回復まで3~6カ月

ハヤタから「疲れやすい」と聞いた母ヨウコさんは、その原因の1つに「貧血」があることをアスレシピで学びました。念のため血液検査をしたところ、ハヤタは貧血ではありませんでしたが、アスリートは貧血になりやすく、一度貧血になってしまうと回復までに3~6カ月かかると知り、食事で貧血対策をすることにしました。

貧血の予防方法
・鉄の摂取量が少なくならない
・エネルギー不足にならない
・胃腸の調子を整える
・質のよい睡眠を十分にとる

ヨウコさん自身が生理の時は貧血になりやすく、エミに初潮がきても貧血にならないよう、家族で貧血予防をしていこうと決めました。中でも貧血予防には、鉄が大切な栄養素であることを知りました。

鉄の役割
・赤血球の成分であるヘモグロビンの材料となって全身に酸素を運ぶ
・血液中の酸素を筋肉に取り込む

激しく足裏を使うアスリートは貧血予備軍

特にアスリートは、激しいトレーニングやストレスによる消化管出血、足の裏の繰り返される衝撃によって赤血球が破壊され、鉄が使われやすくなります。汗をかくと鉄も一緒に流れ出るため、鉄不足にならないよう意識しなければなりません。

アスレシピで「鉄」を意識したレシピを参考にしつつ、どの食材に多く入っているのかを勉強。鉄には、「ヘム鉄」「非ヘム鉄」があるため、それらをバランス良く選びながら、お弁当に使う食材を決めていきました。

ヘム鉄…赤身の肉や魚、貝などの動物性食品
非ヘム鉄…野菜や海藻、大豆

吸収率はヘム鉄が15~20%、非ヘム鉄は2~5%であるため、ヘム鉄が多く含まれている動物性の食品を、摂りすぎに注意しつつ取り入れていきます。野菜や海藻、大豆製品に多く含まれている非ヘム鉄はヘム鉄よりも吸収率は低いですが、摂取量は多くなるため、吸収率が良くなるビタミンCを多く含む食材もチョイスしましょう。

また、ビタミンB12や葉酸も貧血と関わりの深い栄養素であり、通常の食事であれば不足することはありませんが、不足すると赤血球などの産生が低下します。ビタミンB12は、肉や魚など動物性食品にしか含まれていないため、野菜中心にならないように、さまざまな食材を組み合わせて、貧血を予防するための食材を決めていきましょう。

そこで出来上がったのが「貧血予防!鉄分たっぷり弁当」です。貧血予防のポイントである鉄、ビタミンB12、葉酸、ビタミンCに加え、βカロテンが豊富な緑黄色野菜を使いました。おかずのポイントを見ていきましょう。

ピーマンの肉詰め
鉄が豊富な牛肉、ビタミンCが豊富なピーマンの組み合わせで貧血対策ができます。牛ひき肉はタンパク質、脂質も多い食品なので摂取エネルギーが高くなるため、運動量が多く消費エネルギー量の多いアスリートには適した食材です。一方、減量中や体脂肪を減らしたい方は量を減らしたり、脂質の低い鶏むねのひき肉を使ったりすると摂取エネルギーを抑えることができます。ケチャップとソースを煮詰めた濃厚ソースも食欲をそそります。

イワシ缶う巻き
イワシにはタンパク質、カルシウムのほか、DHA、EPA、さらに貧血予防に大切な鉄も多く含まれています。生のイワシよりも、骨や皮なども入っている缶詰のイワシの方が栄養価が高い上、調理も簡単です。アミノ酸、ビタミン、ミネラルなど多くの栄養素を含有している万能食品の卵で巻いて焼くだけです。

アサリたっぷりパスタ
アサリは鉄、ビタミンB12がたっぷりの食材です。コハク酸といううま味成分を多く含むため、シンプルな味付けがよく合います。

ホウレン草の桜エビあえ
鉄、葉酸を多く含むホウレン草は貧血予防になる緑黄色野菜。桜エビはカルシウム、鉄、ビタミンB12が豊富で彩りも鮮やかにしてくれます。

枝豆
枝豆は良質なタンパク質だけでなく、ビタミンB1、葉酸、ビタミンCも含まれているのが特徴です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるのに不可欠で、疲労回復効果もあります。

ミニトマト
トマトは抗酸化作用のあるリコピンが多く、お弁当のすき間埋めにも大活躍します。

ゴールドキウイ
キウイはビタミンC、食物繊維、カリウムが豊富な果物。鉄の吸収を助け、抗酸化作用のあるビタミンCはグリーンよりもゴールドの方が豊富です。国産、輸入品とあり、年中食べられるのも特徴です。

貧血予防のための栄養素別に見ていきます。

貧血予防の栄養素別食材と緑黄色野菜


 牛ひき肉、イワシ缶、アサリ缶、ホウレン草

ビタミンB12
 牛ひき肉、イワシ缶、アサリ缶

葉酸
 枝豆、ホウレン草

ビタミンC
 ゴールドキウイ、ピーマン

緑黄色野菜
 ピーマン、ミニトマト、枝豆、シソ、ホウレン草

エミとヨウコさん用は、主食、主菜、副菜をハヤタの半分、果物は1/4にしています
エミとヨウコさん用は、主食、主菜、副菜をハヤタの半分、果物は1/4にしています

ハヤタのご飯量は250g。おかずにパスタを入れたので、いつもより少し少なくしましたが、お弁当のエネルギー量は1008kcalもあります。エミとヨウコさんは、主食、主菜、副菜はハヤタの半分、果物は4分の1。キュウジさんは全て4分の3で調整しました。

持ち運びする際は夏場同様、しっかり保冷して食中毒対策も忘れずに行いましょう。

管理栄養士・よしむらいくえ