選手や保護者の皆さんから体作りについて色々な相談を受けますが、すべての基本になる大事なことが抜けていると感じることがあります。ジュニアアスリートの体作りの上で、最も大事にしなければいけないことは「必要なエネルギーをしっかりとり、毎日エネルギーが不足しないようにすること」です。

体作りの大前提は「毎日エネルギーが不足しないこと」

エネルギーが満たされているからこそ、「骨づくり」「筋力アップ」「増量」「貧血予防」など目的に合わせた体作りを行うことができるのです。「なんだ、そんなことか~」と当たり前のように感じますが、日頃から運動をしている成長期の子どもたちは、意識して食事を摂らないとエネルギー不足になりやすいのです。

では、だいたいどのくらいのエネルギーをとればいいのでしょうか。下の表は「日本人の食事摂取基準(2020年版)から一部抜粋したものになります。数値はあくまでも目安になりますが、運動量の多い子どもたちはたくさんのエネルギーを必要としていることがお分かりいただけるかと思います。

推定エネルギー必要量(日本人の食事摂取基準2020年版から一部抜粋)

「たくさん食べなくてはいけない」と頭では分かっていても、ジュニア期は胃のサイズが小さかったり、消化吸収機能が成熟していなかったりで、1回の食事で食べる量を増やすことにも限度があります。そこで補食を摂ることが大事になるのですが、それでも摂取量が足りない、または補食をとる時間がとれないなどの場合もあるでしょう。

脂質は細胞やホルモンのもとになる大切な栄養素

食べる量を増やさずに摂取エネルギーを増やす方法として、脂質(あぶら)を活用する方法があります。エネルギー源となる糖質とタンパク質は1gあたり4kcalですが、脂質は9kcalのエネルギーを産み出します。脂質は少量でも、糖質やタンパク質の2倍強のエネルギーを摂取することができる効率の良いエネルギー源なのです。

「スポーツ選手は油を減らすのが当たり前」と思っている方もいますが、そうではありません。脂質は細胞やホルモンのもとになる大切な栄養素です。スポーツ選手は、1日に摂取するエネルギーの25~30%を脂質からとることが望ましいとされています。摂りすぎは体脂肪を増やすのでよくありませんが、減らしすぎもよくありません。

「煮る・蒸す・ゆでる」を「炒める・揚げる」に

食事で脂質を増やす方法はいくつかありますが、材料は同じでも調理法を変えることでエネルギーアップを図ることができます。「煮る・蒸す・ゆでる」を「炒める・揚げる」に変えてみましょう。

特に副菜に、エネルギーが少なめのサラダやおひたし、あえ物などではなく、炒め物や揚げ物を利用すると、油を摂りすぎることなくエネルギーアップにつなげることができます。また、野菜などの淡白な食材に油を活用することで食欲アップにもつながります。

今回紹介するのは「がね☆かごしまの郷土料理」です。がねは見た目が“かに(鹿児島弁でがね)”に似ていることから、このように呼ばれています。

この料理はサツマイモと野菜を太めの千切りにして衣をつけ、油で揚げたもので、地域や作る家庭によって様々な材料や味付けがあります。衣には小麦粉のほかに米粉やもち粉を加えてもっちりとした食感に仕上げるものが多いですが、今回のレシピでは、さっくりした食感になるよう片栗粉を加えました。また、牛乳や粉チーズを入れて少しでもカルシウム補給ができるようにアレンジしました。ご家庭で食事を作る際には、この「ちょっとした工夫」の積み重ねを大事にしましょう。

秋は根菜のおいしい季節。サツマイモと旬の野菜を千切りにして、みなさん流の「がね」を副菜や補食として活用してくださいね。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・久永まゆみ

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