一般的に脂肪というと健康や肥満の敵に思われ、何かと「悪者扱い」される脂質ですか、その役割とは何でしょうか?

 脂質は、炭水化物やタンパク質とともに3大栄養素の1つで、生物や食品を構成する主要成分です。また、貯蔵エネルギーや細胞膜の構成成分としての役割を担っているとともに、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)を運ぶ担体としての役割、乳化剤として食物の消化吸収にも重要な役割を果たしており、多様な栄養生理機能があります。

 食べ物から摂る脂質には、主にトリアシルグリセロール、リン脂質、ステロールがありますが、その中でトリアシルグリセロールが最も多く存在しています。

 トリアシルグリセロールの構成成分である脂肪酸は、正常な発育と機能維持に必要で、体内では合成できないため、食事から摂らなくてはならないものがあります。これを必須脂肪酸といい、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸が該当します。必須脂肪酸が不足すると、成長不良、皮膚炎、泌尿器系異常、生殖機能低下などが発現します。

 少し難しくなりましたが、生きていくためには脂質が必要であることは、理解してもらえたと思います。

 それでは実際、日本人はどれくらいの量の脂質を摂っているのでしょうか? 下図をご覧ください。

見えるあぶらと見えないあぶらの摂取量

 1960年から95年ぐらいまで脂質の摂取量は増加していましたが、その後、食事摂取エネルギーの低下に伴って少し減少し、最近では横ばい傾向です。また「見える油脂(調理で使う炒め油や揚げ油、ドレッシング、バター、マーガリンなど)」よりも「見えない油脂(肉や魚、ナッツ類など食材中に含まれるもの)」から摂る脂質の方が多いことが分かるでしょう。

 脂質(脂肪酸)の種類と適正量については、次回以降説明します。【管理栄養士・今井久美】

◆図の参考資料
・一般社団法人日本植物油協会ホームページ
・厚生労働省「国民健康・栄養調査」各年版
・「国民健康・栄養調査」による脂質摂取量から、日本植物油協会で推計