新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に翻弄させられた2020年。アメリカの食生活が一変した1年でした。首都封鎖(ロックダウン)によるパニック買いでスーパーマーケットの棚が空になり、巣ごもり生活で自炊率がアップ。その結果、新たなサービスも生み出されています。コロナ禍で起きた米国人の健康への意識変化や食習慣の変化を振り返ります。
●ミールキットや料理番組が大人気
3月中旬にロックダウンが発令されて以降、飲食店は持ち帰りと宅配のみの営業となったこともあり、自炊率が大幅にアップ。ほとんど料理をせず、外食率が高いといわれたミレニアル世代(1981年~96年に生まれた人)も自宅で料理する機会が増えたことで、食材とレシピがセットになって届くミールキットや、オーガニック野菜や果物の定期購入の需要が高まりました。
また、歌手で女優のセレーナ・ゴメスが、様々な料理を一流シェフから習う番組が8月に動画配信されるなど料理番組の人気が高まり、オンライン料理教室も続々と登場して料理の腕を磨く人が増えました。
●パン焼きが一大ブームに
巣ごもり時間が長くなると、何かを作る楽しみを見出そうという人が増え、パン作りが一大ブームに。材料の小麦粉やイースト菌がたちまち品切れとなり、3月下旬には前年比647%増という驚異的な売り上げを記録しました。
パンだけでなく焼き菓子に挑戦する人も増え、SNSには手作りパンやパウンドケーキなどの投稿が目立ちました。
●ストレスからコンフォートフードがトレンドに
パンデミックによるストレスから人々はより幸せな気分になり、くつろげるシンプルな料理「コンフォートフード」を求めるようになったと言われています。その代表が、手軽に食べられて長期保存が可能な「冷凍食品」でした。3月以降、約70%のアメリカ人がこれまでよりも多くの冷凍食品を購入したという調査結果もでています。
定番のピザや冷凍野菜だけでなく、調理済みの肉やラザニアなど、温めるだけで1食分の食事になるものが売れ筋で、パイやチーズケーキなどの冷凍デザートの売り上げも伸びたと言われています。また、スナック菓子やクッキー、ケーキなどスイーツ全般や、甘いシリアルなどもコンフォートフードとしてストレス緩和に一役買ったと言われています。
●ジャンクフードの売り上げ増
免疫力アップのため新鮮な野菜などヘルシーフードを求める人が増えた一方で、ジャンクフードの売り上げも伸びました。ロックダウン下のロサンゼルスでは、クリスピー・クリーム・ドーナツや地元で人気のファストフード店「In-N-Out(イン・アンド・アウト)バーバー」のドライブスルーに2時間待ちの列ができたことも。ある調査では、コロナ禍だからこそ、ヘルシーな食事をあえて選択肢から外して、ジャンクフードを購入する人が増えたとも言われています。
●朝食をしっかり食べるように
学校はオンライン授業になり、仕事もリモートで在宅勤務になる人が増えた結果、これまで時間がなくて朝食を食べなかった人たちが、自宅で朝ご飯をしっかり食べるようになりました。その結果、パンだけでなく、シリアルや乳製品、卵の売り上げも急増しました。
●デリバリー需要の急増
飲食店での店内飲食が禁止されたことで、これまでデリバリーサービスを行っていなかった有名店が宅配を始め、プロの味を自宅で楽しめる食材と手作りソースなどのセットを販売するレストランが増えました。また、テイクアウト専門のレストランがオープンしたり、ゴーストレストランと呼ばれるデリバリーサービスも多数誕生するなど、外食産業のあり方も大きく変わりました。
非接触がニューノーマルとなる中、飲食店のみならずアプリを利用した宅配を始めるスーパーマーケットも増え、自宅から1歩も出ずに、いつでも必要な食料品を購入できる時代の幕開けにもなりました。
日本でも外食自粛でデリバリー利用率が上がり、自宅で料理を楽しむ人も増えています。コロナをきっかけに変わった食生活や食意識。より便利で健康にも配した食環境の整備は、コロナ禍が落ち着いても進んで欲しいと思います。
【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】
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