まだ「改造」の途上
「日本リーグで勝つためだけなら、スピードと技術で何とかなる。しかし、世界で戦うのは無理」と高野内氏。「日本リーグ仕様」の体が「世界仕様」になって、選手の意識も変わってきた。「大きな相手とぶつかっても負けないのは、すごく自信になる」と塩田は話す。メンタルも「世界仕様」になってきた。
日本の球技は、身体接触を避けてきた。スピードやパス回しで接触前にボールを離しつないでいた。しかし、ラグビー日本代表は体を鍛え上げ、相手のタックルにも倒れず、倒されてもすぐ起き上がってW杯で史上初めて8強に進んだ。ハンドボールも同じ。「相手に当たられながらでも、パスやシュートができる」と永田。高野内氏は「オフロードパスと同じです」とタックルを受けながらパスを出すラグビーを例に話した。
世界選手権を前に、キルケリー監督は選手たちを「国際的なハンドボール選手になった」と評し、3年間の成長に目を細めた。「まだ肉体改造は途中です」と高野内氏は言うが、五輪までの途中経過を見せる舞台は迫る。世界と戦う体と精神を手にした「おりひめジャパン」が、五輪前哨戦の世界選手権に挑む。【荻島弘一】
<ハンドボール アラカルト>
◆試合会場 コートは40メートル×20メートルで、ゴールは幅3メートル高さ2メートル。いずれもフットサルと同じ。ゴール前方6メートル以内にはGK以外入れない。また、ゴールから7メートルに7メートルスロー(サッカーのPK)ラインがある。
◆選手数 1チームGK1人とCP(コートプレーヤー)6人の計7人。ポジションは司令塔役のCB(センターバック)、シュート力のあるRB(右45度)LB(左45度)、ポスト役のPV(ピボット)、速攻やサイド攻撃で力を発揮するLW(左ウイング)とRW(右ウイング)。選手交代は自由。
◆試合時間 前後半各30分で、ハーフタイム15分。勝敗をつける必要があって同点の場合は10分の延長戦。それでも同スコアは7メートルスローコンテスト(サッカーのPK戦)を行う。
◆反則 プッシング(相手を押す、突き飛ばす)、キック(GK以外が足でボールを扱う)、オーバーステップ(ボールを持って4歩以上歩く)など。明らかに相手の得点機を阻止した場合には攻撃側に7メートルスローが与えられる。
◆ハンドボール女子世界選手権 1957年に第1回が行われ、現在は2年に1回開催。今大会は24回目で韓国(90年)中国(09年)ブラジル(11年)に次ぐ4回目の欧州以外での開催。参加24カ国が4組に分かれ1次リーグを行い、各上位3カ国が2次リーグ(6×2組)に進出。1次リーグの成績を持ち越し、各上位2カ国が準決勝に進む。過去の優勝はロシアが4回で最多。ノルウェー、ソ連、東ドイツが3回で続く。欧州以外のメダル獲得国は韓国2回、ブラジル1回で、欧州勢が圧倒的。男子は38年から開催され、97年に欧州以外で初めて熊本で開催された。
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