甲子園で春夏ともに優勝している名門・常総学院高(茨城)は週末、お母さんたちが交替で炊き出しを行う「母の味」が伝統となっている。再びの甲子園優勝を目指す同校を約2年ぶりに訪問。選手は代替わりしたが、保護者の愛情とサポートは変わっていなかった。
トントントントン~。11月のある休日、朝8時。常総学院野球部グラウンドすぐ横のプレハブからは、野菜を切る音が響く。その音をバックに、グラウンドでは練習試合のシートノックに選手が汗を流していた。
同校では土日祝日、選手のお母さんたちが昼食を作っている。スタートは88年冬。当時の1日練習では、昼食はおにぎりと簡単なおかずだけ。厳しい練習の合間に、冷えたおにぎりをほおばる選手を見た父母が「温かいものを食べさせてあげたい」と有志で昼食作りを始めた。
以来、30年間続く「週末の母の味」。佐々木力監督(52)は「作りたてで温かい。しかも母の味を食べられるのは、寮生活の選手にはうれしいですよね」と感謝する。
交代で月1回担当、マル秘ノートも
昼食作りは10~11人を1組として、1カ月に1、2回「登板」が回ってくる。代々受け継がれているノートに献立、材料、費用など細かく記入。次の担当者は、それを元にメニューを決める。
班長を務める久松祐葵内野手(2年)の母久美さん(44)は「メインのお肉に、添えものを何点かと汁物、デザートで組み立てます。子供たちに喜んで食べてもらえるようなメニューを考えています」と話す。
今回のメインが鶏肉なら、次の班は豚肉やひき肉でハンバーグやタコライスなどとアレンジ。夏は冷たいうどんとおいなりさん、クリスマスにはチキンなどと工夫している。
誕生日の選手がいればケーキを用意。今年はソースも市販のものから「人数が多いので、経済的」と手作りにした。毎年少しずつバージョンアップしている。
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