<キッチンは実験室(39):梅と梅干しの科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。6月といえば、スーパーには緑色のものから完熟している黄色のものまで、「梅」が並ぶ時期。梅干しを漬けたり梅ジュースを仕込んだり、そんな「梅仕事」が楽しみな季節でもあります。ところで、どうして梅は黄緑色なのに、梅干しは赤色なのでしょうか。どうして梅は生のまま食べないのでしょうか。今回は、そんな梅の不思議と魅力に迫ります。

梅干しが赤い理由、シソとの関係

梅干しが赤いのは、作る過程に秘密があるのです。

<梅干しができるまで>

(1)梅をきれいに洗って、ヘタをとり、塩で漬ける(梅1kgに対し、塩150g程度)。
(2)2週間程度つけ置きする。2、3日すると梅から液が出てくる(これが梅酢!)。
(3)シソのアク抜きをする。シソ(300g)を塩(50g)でもんで、しっかりと絞る。
(4)アク抜きしたシソを(2)の梅酢と合わせて、梅の容器に加え、10日間程度つけ置きする。
(5)天気の良い日に数日間、天日干しして水分を乾燥させる(土用の丑の日が明けた頃)。

(2)の過程で、梅から液が染み出てくるのは、浸透圧が関係しています。梅の中の細胞液よりも外の塩分が濃いため、中の水分が外に出てくるのです。こうして出てきたすっぱい液は、梅酢と呼ばれる梅のエキス。梅を漬けた後、調味料として別の料理に使えます。

また(4)の過程では、紫色のシソがピンク色に変わっていきます。これはシソに含まれる紫色の色素のアントシアニンが、梅酢の酸性でピンク色に変わるからです。

もちろん、シソを加えなくても、白漬けという形で梅干しは出来上がります。シソを入れ始めた理由は諸説ありますが、赤く染まってきれいだということと、「魔除」としての着色効果、香りの良さや防腐・防虫効果があるとされています。

カリカリ梅に必要なカルシウム

梅干しは柔らかいものから、硬いカリカリ梅までさまざま。カリカリ梅を漬けるときは、熟していない青梅を使うだけではなく、カルシウムを加えます。

梅は完熟すると柔らかくなりますが、これは果肉に含まれる食物繊維「ペクチン」が分解されていくから。以前のコラム「牛乳で作るぷるぷるデザート、水でも固まる謎を明かす」の中でも説明しましたが、ペクチンは、牛乳やミネラルウオーターに含まれるカルシウムと結びつくことで、軟化を防げます。それを応用したのが、カリカリ梅です。

作る過程で卵の殻(よく洗って乾燥させて砕いたもの)を梅酢の中へ入れます。天日干しせずにそのまま漬けておくと、カリカリ梅は出来上がります。

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