<キッチンは実験室(6・上):ゆでる温度で硬さが変わる?>

 みなさん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)の「みせす」です。第5回の「ホウレン草」に継き「野菜をゆでる」をテーマにウェブ講座をします。

 今回のテーマは「ニンジン」です。生のニンジンは硬く歯ごたえがありますが、ゆでると柔らかくなりますよね。では、なぜ柔らかくなるのでしょう? その秘密をひも解いていきましょう。

細胞をつなぐペクチンが作用

 まずはその前に、実験の準備をしましょう。

 鍋に入れたニンジンを、弱火と強火で煮比べます。10分後…ニンジンの硬さに違いはでましたか?

 ニンジンの硬さ、軟らかさを決めているのは「ペクチン」。ニンジンの細胞と細胞をつないでいる糊のようなもので、これは水溶性食物繊維の1つです。

 強火で煮るとペクチン同士の結合が切れてしまうので、細胞がバラバラになり、結果として軟らかくなります。青梅が熟すと軟らかくなるのは、同じようにペクチンの形が変化するからです。

 一方で、弱火でコトコト煮たニンジンは、軟らかくなってもペーストになるようにはつぶれません。その秘密は温度。60~70℃でニンジンを煮ると、なんと、生よりも硬くなるのです。

カルシウムと結合して安定化

 「ペクチン」といっても、その構造はさまざまです。ペクチン同士は結合し、細胞をぎゅっとつなぎ止めますが、不安定な(イオン)状態にさらされると、今度は仲の良いカルシウムと結合して安定化します。その構造を操るのが、ニンジンに含まれるペクチンメチルエステラーゼという酵素です。

 60~70℃の時はこの酵素がよく働いて、不安定なイオン化状態にするので、ペクチンはニンジンに含まれるカルシウムと結合し、安定した架橋結合になります。この結合が一度できると硬く結ばれるので、これ以上煮ても柔らかくなりにくいのです。

 ちなみに、レトルトカレーなどに入っているニンジンは、工場で出荷するときに熱で滅菌したり、家でコトコト湯せんしたりするのに、口の中で溶けることなく、硬さを残しているのはなぜでしょう? これは大量調理や缶詰調理などの調理科学の分野で生かされている「予備加熱」というもののおかげ。1度低めの温度で硬くすることで、そのあとは煮崩れない調理に応用できるものです。(第6回・下へ続く)

金子浩子

子ども向け食育ボランティア団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」代表・講師
東京薬科大生命科学部卒/群馬大学大学院修士(保健学)。中・高校教諭一種免許状(理科)取得
国際薬膳師・国際薬膳調理師・中医薬膳師。キッズキッチン協会公認インストラクター。エコ・クッキングナビゲーター