「トマトが赤くなると医者が青くなる」という言葉を聞いたことはありませんか? トマトは完熟して赤くなることにより、リコピンの量が最大限に増えていきます。

このリコピンという成分はβカロテンの仲間で、抗酸化作用はβカロテンの2倍とも言われます。活性酸素を取り除く力を持っているので、運動後の疲労回復にも期待ができます。

トマトがおいしくなるのは今の季節

夏野菜のイメージが強いトマトですが、高温に弱い植物なので、実は味が良くなるのは今の季節。サラダや炒め物、煮込みやおでんなど、どんな料理にしてもおいしい優秀な野菜なのです。

また、1年中流通するトマトの加工品、ホールトマト缶は、栄養成分が生のものより劣るイメージがあると思います。加工の過程で加熱するため、ビタミン類の一部(ビタミンCなど)は残念ながら減少しますが、リコピンの量は加工によって濃縮されるので、生の2~3倍まで上がります。濃縮されることでうま味成分、グルタミン酸も倍増。手軽に入手できて、疲労回復成分もうま味も倍増するとは、とてもうれしい食品です。

今回は、そのホールトマト缶を使って作る「甘くないナポリタン」を紹介します。ケチャップを使わず、ホールトマト缶を煮詰めて使うことで甘さがなくなり、すっきりしているのにコクが出ます。最後にすりおろしのチーズを加えると、簡単に味がまとまります。

ホールトマト缶を煮詰めたものは冷凍保存しておくと、すぐにソースとして使えて便利です。ジッパー付き保存袋に入れて、平らにならしてから冷凍すると、使用する分だけ折って使えます。ぜひお試しください。

料理家・山内千夏