京都の伝統的な漬物に「しば漬け」があります。鮮やかな赤紫色は、赤ジソの葉の色。市販で売っているものは、酢で酸味を出しているものもありますが、本来の酸味は、乳酸発酵の自然熟成によって作られます。

 野菜に塩をまぶして長い間置いておくと、酸っぱくなります。これは自然の中にいる乳酸菌による発酵が生じ、酸味が作られるからです。それに伴い、酸性度も強くなり、酸性の中では生育できない雑菌の増殖が抑制され、腐食を防ぎ、保存性が増強されます。

ナス、赤ジソ、塩だけで作る「しば漬け」
ナス、赤ジソ、塩だけで作る「しば漬け」

 「しば漬け」の原材料はナス、赤ジソ、塩と、とてもシンプル。塩、ナス、赤ジソを交互に入れて重石をし、じっくり待つこと2週間。時間は少しかかりますが、放置しておけば良く、夏の間に食べられます。

 酢を使った“即席しば漬け”も良いですが、自然熟成の独特なうま味は格別。高血圧予防などで塩分の高い漬物は敬遠されがちですが、発酵食品である“ホンモノの漬物”は上手に食卓に取り入れてほしいものです。

 赤ジソは夏の時期しか手に入らないため、作るなら今が旬。赤ジソは無農薬で栽培されることが多いので、その点でも安心です。シソジュースや梅干しに使うだけでなく、今年は「しば漬け」にもトライしてみてください。

日本は発酵食品の宝庫

 乳酸菌はさまざまな種類があるため、種類の違う発酵食品を取り入れていくことが重要です。ヨーグルト、みそ、納豆の銘柄を変えてみたり、いつもは食べない珍しいものを食べてみることもおすすめです。

 日本には発酵食品の種類がとても多く存在し、郷土料理にもたくさんあります。

 例えば、沖縄の「豆腐よう」は、島どうふを紅麹と泡盛を使って発酵させます。石川県や富山県の「かぶら寿司」「大根寿司」は、輪切りにしたカブや大根の間に、1~2週間塩漬けした寒ブリやサケを挟み込んでニンジンや昆布、鷹の爪などと一緒に米麹で発酵させたもの。若狭地方の「へしこ」は、内臓とエラをとったサバを塩漬けし、米ぬかと調味料を合わせて発酵させます。秋田県の「しょっつる」はハタハタを使った魚醤。能登の「いしる」は、イワシやイカの内臓や頭、骨を塩漬けして発酵させた魚醤です。

 日本だけでなく、世界にも多くの発酵食品があるので、食べる機会、作る機会があれば積極的に試してみてください。

管理栄養士・園部裕美