「試合やレースの前日や当日は、炭水化物中心の食事を」という言葉だけを耳にして、前日はうどんと炊き込みご飯、当日の朝は梅おにぎりにもちとカステラ! というメニューにしているというジュニアアスリートの話をよく聞きます。

 確かに、炭水化物(糖質)は早くエネルギーになり、試合などでは重要なエネルギー源となります。このような食事が良いと言われる理由は、糖質のエネルギーであるグリコーゲンを試合のために、肝臓に最大限まで貯めるためです。実際に、90分を超えるような持続的な運動において、3、4日前から炭水化物の量を増やす「カーボ(グリコーゲン)ローディング」という食事法は有効だと言われています。

エネルギーに変えるための栄養素が必要

 しかし、炭水化物が代謝(体で使われてエネルギー源となる)されるには、さまざまな栄養素が必要です。つまり、炭水化物だけ摂っても、増やしても、得たい効果が得られない、逆に減ってしまう恐れもあるのです。

 炭水化物をエネルギーに変える働きがある栄養素として、ビタミンB1はよく知られていますが、それだけではありません。ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸などのビタミンB群、マグネシウム、鉄、マンガンなどのミネラル、またアミノ酸も必要です。

主食・主菜・副菜…の揃った食事のまま

 試合前までに上記のような栄養素をしっかり補給して、体に貯蔵できていればいいのですが、その保証はありません。毎日のトレーニングでエネルギーを常に作り出していること(生きるためのエネルギーも含む)、成長期であれば、成長のために細胞は常にフル回転でエネルギーを作り出しています。

 このことから、たとえ90分を超える持久競技であっても、試合前は炭水化物だけの食事にする必要はなく、主食、主菜(タンパク源)、副菜(野菜)の揃ったメニューのままにします。変えるのは、選ぶ食材や量の割合です。

変えるのは食材・部位・量の割合

 すべての競技にも共通して気を付けるポイントを以下に書きます。

<試合3日前から>
・揚げ物は控える。
・普段食べないようなものは避ける。

<試合前日の夜>
・ご飯をいつもの1.5~2倍にする。または麺類やもちを追加する。
・生野菜は避けるが、火を通した野菜(煮物、ゆで野菜、汁物、炒め物)はいつも通りしっかりとる。
・肉、魚、卵、大豆製品は組み合わせてしっかり食べる。
・揚げ物以外にも油を多く使った料理は避ける(ルーを使ったカレー、脂たっぷりのひき肉やバラ肉を使った麻婆豆腐やハンバーグ、マヨネーズをたっぷりかけるグラタンやドリア、加工肉など)
・外食するなら和食を選ぶ。洋食は家で作るよりも油を使っていることが考えられるので注意する。

<当日朝>
・普段食べている朝ご飯が基本で、ご飯+タンパク質(サケや卵、納豆、豆腐など)+みそ汁の形がベスト。
・朝が早い場合は、おにぎり(梅しらす、おかか、サケなど。海苔とゴマをつけると◎)とヨーグルト、ゆで卵(煮卵)など。糖質とタンパク質食品をとれるようにすると良い。
・バナナや他のフルーツをプラスしても良い。

 カステラなどのお菓子、オレンジジュース、ゼリー飲料は、競技強度や嗜好、本人と何が食べられるか相談しながら決めていくのが良いでしょう。年齢が低ければ低いほど、市販の補助食品を使うよりも、しっかりと噛んで食べられる自然の食品を使った方が、胃腸のトレーニングにもなりますし、前述したように偏った栄養素ばかりが使われることも少なくなります。

「豚しゃぶとゆでキャベツのいろいろダレ」。お好きなタレでどうぞ
「豚しゃぶとゆでキャベツのいろいろダレ」。お好きなタレでどうぞ

 今回紹介するレシピは、試合前日におすすめの「豚しゃぶとゆでキャベツのいろいろダレ」です。

 豚肉はグツグツ煮立たせずに、沸騰する前の温度でゆでることで柔らかさを保ちます。ゴマポン酢ダレ、ニラダレ、大根おろしなど、お好みでお召し上がりください。野菜はキャベツ以外に、春菊や小松菜などの青菜をのせるといいでしょう。写真では湯むきしたトマトとシソをのせています。

管理栄養士・園部裕美