<健康診断の数値の見方>
血液検査から様々な病気のほか、栄養状態も分かります。今回は糖代謝の指標から栄養状態を評価します。自覚症状がほとんどなく、合併症が怖い病気といえば、糖尿病です(基準値は検査機関によって異なります)。
血糖値
基準値:70~109mg/dl
血糖値は血液中のグルコース(ブドウ糖)の量を表し、高いと糖尿病の疑いがあります。血糖値は上げない方が良いと考えがちですが、体を動かすエネルギー源として血糖は必要です。低血糖(70mg/dl未満)になると発汗、頻脈、手足の震えなどの症状が出始め、50mg/dl未満になると意識がなくなり、死に至ります。
生きていくためには、ある程度の血糖値を維持する必要があるので、食事や飲料の摂取以外にも、血糖値を上げるメカニズムがいくつかあります。血糖を細胞に取り込むために必要なホルモンであるインスリンの分泌低下、インスリンの働きの低下(インスリン抵抗性)により血糖値は上がります。
ストレスのある状態では、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の分泌が高まり、糖新生(グリコーゲンを分解して、ブドウ糖を作る)が亢進して血糖値は上がります。興奮状態の場合はアドレナリンが分泌し、こちらも血糖値を上昇させます。
このように、血糖値が上がることが悪いわけではありません。血糖値の急上昇・降下を繰り返すことで、インスリンを分泌する膵臓が疲弊し、インスリンの分泌不全、またはインスリンの抵抗性が起こり、高血糖が続くことで血管にダメージを与えるのです。
逆に、血糖値が下がる原因は、血糖降下薬やインスリン注射など薬剤によるものがほとんどですが、胃を全摘した後に低血糖になることもあります。また、ジュースなど糖分の多い飲み物を多飲すると急に血糖値が上がり、インスリンが過剰に出て低血糖になることがあります。空腹時間が長かったり、消費エネルギーが多い運動の後に血糖値が下がり、頭がぼーっとすることがありますが、その時は糖分の含まれた甘いものを少し摂ると回復します。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー、グルコヘモグロビン)
基準値:4.6~6.2%
グルコースとヘモグロビンが結合したもので、全てのヘモグロビンの中でグルコースと結合した割合です。グルコースが慢性的に多いと、ヘモグロビンと結合する割合が高くなるため、上昇します。ヘモグロビンは赤血球の中にあり、赤血球の寿命が約120日であることから、赤血球の破壊よりHbA1cは徐々に減少していくため、HbA1cは1~2カ月前の平均の血糖の状態を表します。
血糖値は変動が大きいもののHbA1cの変動は緩やかです。血糖値が126mg/dl以上かつ、HbA1cが6.5%以上の場合、糖尿病と診断されます。
体を動かすためにグルコースを細胞へ取り込む時や、グルコースをグリコーゲンや中性脂肪として貯蔵エネルギーとして蓄えるためにインスリンは必要なホルモンですが、タンパク質の合成にもインスリンは必要です。つまり、筋肉をつけるためにもインスリンは必要なのです。
インスリンの分泌を節約するばかりが良いのではなく、必要な時にインスリンが働いてくれるように、適度に糖質を摂取してインスリンを分泌させることが必要です。
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