<ご飯を補う奥原希望の工夫/中>

ご飯をあまり食べられない、あるいは食べてくれない―。そんな悩みを持つ人は一般人に限らず、食を力の源とするトップアスリートの中にもいる。

バドミントン女子シングルスの五輪金メダル候補に挙がる奥原希望(26=太陽ホールディングス)もその1人…いや、正確にはその1人だった。エネルギーとなる白ご飯をたくさん食べることが苦手だった彼女が、克服に至った創意工夫とは…。

「糖質」補給で白米代わりに選んだのは

エネルギーを補える食事を、「おいしい」を重要視しながら作ろうと、チーム奥原で始まったオリジナル「勝ち飯」作り。まず最初にイメージしたのは、エネルギーをため込む「試合期」のメニュー作りだった。

奥原が挙げた好きな食べ物は、豚キムチ。これをベースとすることは大前提だった。その上で、白米で補えない糖質をうまく入れ込むために「ジャガイモの方が腹持ちがいいかな?」「いや、お餅の方がいいよ」「お餅なら角餅より、しゃぶしゃぶ餅の方が食べやすいかも」。話し合いながら工夫できる箇所を見つけていった。

試食を重ねる奥原希望(左)(味の素VP提供)
試食を重ねる奥原希望(左)(味の素VP提供)

打ち合わせや試食を重ねて完成した品は、一見すると普通の豚キムチに見えた。

しかし、中には薄いしゃぶしゃぶ餅がまぶされている。豚肉なのか餅なのか分からないまま食べられるので、知らず知らずに餅で糖質も摂れているという優れものになった。

「おいしい! これならテンション上がる!」。

好きなモノだけに自然とはしが進み、奥原の顔もいつのまにかほころんでいた。

笑みがこぼれる奥原(味の素VP提供)
笑みがこぼれる奥原(味の素VP提供)

工夫をこらしたのは主菜だけでなく、汁物にも及んだ。

好きなカボチャやニンジン、ブロッコリー、シイタケなどの野菜を食べやすいように細かくカット。疲れるがたまると嚙むこと自体が苦痛になるので、スライスや角切りなど切り方を工夫した。

「野菜の切り方がすごく食べやすいですね。これだったら子どもも野菜を食べれそう」。

鶏がらスープの素を使ってできあがったのは、題して「奥原オリジナルACEスープ」。のどや鼻の粘膜を保護するビタミンA、抗酸化作用でウイルスに対抗するビタミンCとビタミンEが含まれ、これらは免疫力アップを促す抗酸化作用の働きも持っている。さらにウインナーを加えてビタミンB1で疲労回復も狙う。

豆腐やワカメといった定番みそ汁ではないところに、加えられない具はないことも見てとれる。

そして、これだけで良しとはしなかった。栄養は試合期だけ整えればいいのではなく、試合前のコンディショニングも大事。そこで「調整期」のメニュー作りにも取りかかった。

ただ、大きな手間はかからなかった。これも、ほんのちょっと工夫するだけで良かった。【今村健人】(つづく)

完成したオリジナル「勝ち飯」(味の素VP提供)
完成したオリジナル「勝ち飯」(味の素VP提供)