ある女子選手から「脂肪がつきにくい食べ物を教えてください」と質問が入りました。アスリートにとって余分な体脂肪をつけないようにすることは、パフォーマンス維持のために必要なことですね。

余った摂取エネルギーは脂肪になる

「脂肪がつきにくい食べ物は何か」という話に行く前に、エネルギー代謝の基本を押さえておきましょう。その前提として、食事からとる摂取エネルギー量より消費エネルギー量が少なければ、余った分は体内に脂肪として蓄えられてしまいます。

1日の総消費エネルギー量は基礎代謝量が約60%、食事誘発性熱産生が約10%、身体活動量が約30%で構成されています。基礎代謝量は体格に、食事誘発性熱産生は食事摂取量に依存するため個人内での変動はあまり大きくありません。しかし、筋肉量が多い人の方が基礎代謝量が高い傾向にあるので、余分な体脂肪をつけないためにもトレーニングを継続していくことは不可欠です。

過剰摂取されたタンパク質も脂肪になる

もう1つの基本は、五大栄養素の中でエネルギーを作り出すことができるのは三大栄養素と呼ばれる炭水化物・脂質・タンパク質です。タンパク質を多く含む食品ならいくら摂っても良いと思っている方もいるようですが、トレーニングをしていても体タンパク質合成に利用される1日のタンパク質量には上限があり、余ったタンパク質は脂肪に変換されて体内に蓄積されてしまうのです。

野菜や海藻類など、エネルギー量の少ないものばかり食べていれば、摂取エネルギー量は少なくなりますが、アスリートの体作りやパフォーマンス向上は期待ができません。アスリートの食事は(基本の形)に整えることが大切でしたね。

脂肪がつきにくい食事は

これらのことから「脂肪がつきにくい食事」というのは、以下の形が考えられます。

1、基本の食事の形に整え、エネルギー量の少ない野菜をしっかり摂り、特に肉類は脂質の少ない赤身の多い部位を選ぶ。

具体例としては、次のようなことが挙げられます。

鶏肉は胸肉やささみ肉を選び、皮や脂の塊は破棄する
豚肉や牛肉はひれ肉やもも肉を選び、ロース肉を使用する場合はまわりの脂肪を取り除く
牛乳やヨーグルトは低脂肪または無脂肪のものを選ぶ
チーズは脂質の少ないカッテージチーズを選ぶ
果物はビタミンが豊富だが、糖質も多いので食べ過ぎない 

2、揚げ物など脂質摂取が多くなる調理法を控えたり、テフロン加工のフランパンなどを使用したりして、調理用の油の量を控える

見落としがちな次の点にも気をつけましょう。

サラダのドレッシングはノンオイルや油の少ないものを選ぶ
カロリーの高いマヨネーズ、焼き肉のタレ、ソース類の使い過ぎに注意する
パスタに粉チーズをたっぷりかけ過ぎない

3、摂取エネルギー量より消費エネルギー量が少なくならないように、運動量を確保する

以上のように、肉の部位の選択や調理法、調味料等に気をつけていくことで、摂取エネルギー量は抑えることができます。また、必要な補食は別ですが、「ちょっとだけ」と思って食べている間食もチリも積もれば…となるので、要注意です。まずはそこからやってみましょう。

ひれ肉より安価で低脂質のランプ

写真は、「ランプ肉と温野菜のサラダ」です。ランプ肉は、もも肉の中でも柔らかく、うま味が詰まった部位。ひれ肉より安価で、低脂質高タンパク質で鉄も多く含まれているので女子アスリートにおすすめの食材です。和牛より国産牛や輸入牛肉の方が、脂質が少なくカロリーも低いので、状況に合わせて選んでください。

また、寒い季節は冷たいサラダなどで生野菜を取りにくい場合は、サッとゆでたり、焼いたりすると食べやすくなります。熱に弱いビタミン類の破壊は多少ありますが、冷たくて少ししか食べられないことよりはおすすめの食べ方です。余熱で火の通りが進むので、加熱し過ぎないことがポイントです。

食事のほか、毎日、決まった時間に体組成計にのり、体重や体脂肪率のグラフを付けることも推奨します。増減に一喜一憂する必要はありませんが、「増えてしまった」と思った日は有酸素運動を増やし、消費エネルギー量を上げて早く対処していくと、コンディション維持につながります。

管理栄養士・石村智子