前回のコラム「効率良く筋肉をつけるためのタンパク質の摂り方、体の中の働きを知る」では「タンパク質の働き」についてお伝えしました。今回はタンパク質の質やサプリメントについてお話しします。

筋合成のメカニズム

私たちの身体は、タンパク質の分解と合成を微妙なバランスで保ちながら筋肉を維持しています。分解速度と合成速度が同じであれば筋量は維持されますが、食事からのタンパク質摂取が不足している状態で運動(活動)を行えば、分解速度が合成速度を上回り、筋肉は減少します。合成速度が分解速度を上回らない限り、筋肉は増えていかないのです。

筋合成にはトレーニングが必須

筋肉は、トレーニングで「使う」→「壊れる」→食事や休息で筋肉を「修復する」というサイクルを繰り返すことで、太く大きくなります。食事でとったタンパク質が消化・吸収されて、血中のアミノ酸濃度が高まると筋合成のスイッチが入り、合成の速度が上がります。

また、筋トレなどトレーニングを行うことでも同様なことが起きます。筋合成には食事からのタンパク質摂取だけではなく、「トレーニング」という刺激が必要です。

筋合成のキーマン「BCAA」とは

食物中のタンパク質は消化・吸収されてアミノ酸になります。アミノ酸はエネルギー源として使われるほか、筋肉や内臓、骨のコラーゲンなどの体タンパク質や酵素、ホルモンなどを合成する材料になります。

アミノ酸は20種類あります。体内で合成できないか、できても少量のため食事からとる必要がある「必須アミノ酸」と、合成できる「非必須アミノ酸」とに分類され、筋合成には両方が必要です。必須アミノ酸はバリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンの9種類をさします。

特に筋合成に深くかかわっているアミノ酸は、必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(BCAA=バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)です。BCAAは筋肉組織の主成分であり、筋合成を促進し、分解を抑制する働きがあります。トレーニングにおける筋肉痛や疲労感の抑制や、運動パフォーマンスの向上に効果があるという研究結果も出ており、サプリメントも多く出回っています。

アミノ酸スコアとは

「アミノ酸スコア」とは、食品に含まれる必須アミノ酸の含有率を数値化したものです。ヒトが必要とする必須アミノ酸の量を100として、食品中の必須アミノ酸9種類の含有量を比率で表したとき、最も低い比率がその食品のアミノ酸スコアとなり、100に近いものを「良質なタンパク質」といいます(参考文献:市村出版 日本スポーツ栄養学会監修「エッセンシャルスポーツ栄養学」)。

引用文献:特定保健指導の実践定期指導実践者育成プログラム(https://www.mhlw.go.jp)より抜粋
引用文献:特定保健指導の実践定期指導実践者育成プログラム(https://www.mhlw.go.jp)より抜粋

アミノ酸スコアは、動物性食品の方が植物性食品より高いと言われています。図1のように、食パンだけだとトリプトファン、スレオニン、リジンが不足していますが、牛乳を一緒に摂ると、それらは補充されます。図2の米も同様で、スレオニン、リジンが不足していますが、木綿豆腐を一緒に摂ると、補充されます。このように色々な食品を組み合わせることで、食事から摂るタンパク質の質を良くすることが出来るのです。

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