朝夕が涼しく、過ごしやすくなると、急に夏の疲れが出てきます。暑さを必死でこらえていた体がSOSを出し始めるのがこの時期で、夏までは何ともなかったのに、いやに体がだるいな…と感じるなら、ただの疲れではないかもしれません。

疲れと似た症状、中高生や女子に多い

実は、疲れとよく似ている症状なのが、鉄欠乏性貧血です。貧血のうちの90%を占めるといわれていて、食事からの鉄分が不足すると起こりやすいのです。

「貧血」というと、多くの人は倒れるイメージがあるのですが、鉄欠乏性貧血の症状はすぐ息が切れる、疲れやすい、いくら寝ても眠くてだるくて…といったものが多く、中にはやたらと氷が食べたくなるということもあります。

暑い夏、氷をガリガリと食べるお子さんの姿を見たかもしれませんが、もしかしたら、それが鉄欠乏のサインかもしれません。特に中高校生、女子、スポーツをしている人はなりやすいと思って間違いないでしょう。

合宿のメニューに一口のレバー

私は山梨県北杜市に合宿所を構えていますが、指導するクラブチームの合宿では、毎回のようにプラスαのおかずにレバーを出しています。中学生の女の子は貧血になりやすいので、献立の説明をしながら鉄欠乏性貧血に関心を持たせることも、メニューにする理由です。

スポーツ栄養のセミナーなどでよく、「レバー以外で鉄分がとれるものはないですか?」と聞かれます。もちろん、マグロの赤身などほかの食材でもとれますが、レバーはやはり最強です。

「貧血ならホウレン草ですよね」とも言われますが、植物性の食品にも確かに鉄分(非ヘム鉄)はあるものの、動物性の食品に含まれる鉄(ヘム鉄)の方が吸収が良いのです。

アスリートなら苦手でも克服せよ

ただ、レバーはクセのある食材なので、しっかりした味付けにすることが多くなります。「嫌いだ」と思って避けてきた食材が「合宿で食べられた!」ということがあるので、合宿時はプラスαのおかずとして、皿の横にちょこっと乗せています。

昨年の合宿時の食事。メインディッシュの脇に、レバーの赤ワイン煮
昨年の合宿時の食事。メインディッシュの脇に、レバーの赤ワイン煮

このくらいなら多少苦手でも、なんとかなる量です。レバーへの抵抗感をなくすのは、特にアスリートには大事な「練習」だと思います。

今回紹介するのは、昨年までの合宿で出していた「少量でも最強!鶏レバー赤ワイン煮」です。レバーにはヘム鉄という吸収の良い鉄分や葉酸、ビタミンB12など貧血予防や改善のために大切な栄養素が詰まっています。

赤ワイン煮としていますが、煮込んでいる間にアルコールは飛んでしまうので子どもでも大丈夫。ケチャップやソースなども使用しているので、ハンバーグソースのような味わいです。

セロリもたっぷり入れて、調味料とセロリでレバー特有のクセを少なくしています。たくさん作って冷凍保存しておくことも可能です。定期的にレバーを食べて、貧血を寄せつけない体を作りましょう。

管理栄養士・月野和美砂