高校教員の時、家庭科を教えていました。栄養に関する授業で鉄について話す時は、必ず「鉄欠乏性貧血」に触れていました。

鉄欠乏性貧血は、初期では単なる疲労と見分けがつきません。本当にひどい息切れや動悸などが出てようやく異変に気付き、医療機関に行く、ということが少なくありません。

その症状、全部私に当てはまります

ある授業の際、その症状について具体的に話しました。「疲れやすい」「少し動いただけで息が切れる」「他の人はすぐに元気になるのに自分はなかなか呼吸が落ち着かない」「家に帰ると、ご飯を食べるか食べないかくらいでもう起きていられなくなり、すぐに寝てしまう」「寝ても寝ても眠気がとれない」など。

授業が終わると、ある女子生徒が来て「先生がさっき言ったこと、全部、私に当てはまります。親に言って病院に行った方がいいですか?」と。

彼女はハンドボール部でした。スタミナがないことを気にしていました。改めて本人の体調を確認し、内科医へかかるよう勧めました。

次の授業の時、「先生、やっぱり貧血でした。薬をもらいました」と報告に来たので、食生活のアドバイスをしました。それからも時折声をかけ、様子を聞いていました。

中学の時から貧血だったと思います

半年後、彼女は言いました。「血液の数値がすごく良くなってきました! あと少しみたいです。でも、今の状態でもすっごく楽になりました」「先生、私、多分中学の時から貧血だったと思います。もっと早く、鉄欠乏性貧血だと分かって治療していたら、(ハンドボールの強い)違う高校に行けたかもしれないです」と笑っていました。

鉄は吸収率がとても低い栄養素です。成長期、しかもスポーツをしていれば、なおさらなりやすい鉄欠乏性貧血は、夏の終わりの時期に起こりやすい症状です。日頃から、鉄分の多い食品をとるように心がけましょう。

今回は「コチュジャン風味マグロのサラダ」です。

マグロの赤身には、鉄の中でも吸収の良い「ヘム鉄」が多く含まれています。鉄はビタミンCと一緒にとると吸収が高まるので、生野菜と合わせました。少し辛みのあるコチュジャンでユッケ風に味をつけた野菜と魚の“おかずサラダ”。火を使わないレシピなので、暑い夏でも楽に調理できます。

食欲が落ちてきている夏の後半こそ、鉄を意識。できる限り、吸収しやすい組み合わせを意識して、体に取り込みましょう。

管理栄養士・月野和美砂