栄養セミナーを実施すると、「背を伸ばすためには何を食べたらいいですか」「牛乳は良いですか、悪いですか」「肉と魚はどちらがいいですか」「プロテインは飲んだほうがいいのですか、やめた方がいいのですか」などの質問が多くあります。

「魔法の食べ物」はない

これまでにも伝えてきましたが、「魔法の食べ物」はありません。世界で活躍する選手たちも、特別な食材や高級な食材だけを食べているわけではありません。自分の目標に向かって、自分の調子を整えるために、食べ方を学んで実践しています。「考えて」食べています。

「何をどれだけ食べたらいいか?」の前に、運動する成長期アスリートは大人よりも多くのエネルギーをとらなければならないことを前回のコラムで書きました。それならエネルギーだけをとればいいのかというと、そうではありません。色々な食材から色々な栄養素をとることが大切です。

「車」を動かすのはビタミンやミネラル

例えば、私たちの身体を車のボディーとし、エネルギーを持つ3大栄養素の糖質、脂質、タンパク質をガソリンだとします。車にガソリンが満タンであっても「エンジンをかける鍵」がなければ、車を動かすことができませんよね。この鍵となるのが、肉や魚、野菜や果物に多く含まれるビタミン、ミネラルです。ビタミンやミネラルは筋肉の収縮や栄養素の吸収を助けるなど、数多くの役目を果たしています。

水と日光があれば自分で栄養を作り出すことできる植物と違って、私たちの体は自分で栄養をつくることができません。だから色々な食材から色々な栄養をもらいながら、バランスのよい食事を摂る必要があるのです。

何1つ欠けてはいけない栄養素

栄養バランスというのは、「チームメイト」との関係に似ています。栄養素それぞれが大切な役割をもっているので、誰1人、何1つ欠けてはいけないのです。バランスを整えるために、主食・主菜・副菜を揃えるようにしていきましょう。

栄養バランスを整えるために

上の図は、食卓をイメージしたものです。

主食は、ご飯、パン、麺類などで、主にエネルギー源になる食材です。スポーツ選手にとって大切なエネルギー源となるので、毎食全体の「食事の半量以上」を摂りましょう。個人によって必要なエネルギー量は異なりますが、成長期は特に「主食でエネルギー源を確保」します。

次に多く食べてほしいのが「副菜」です。野菜・キノコ類、イモ、海藻類は、特にアスリートは不足しがちです。毎食、ホウレン草やブロッコリー、ニンジンなどの色の濃い緑黄色野菜や、キャベツ、大根、タマネギなどの淡色野菜の両方を食べます。具だくさんの汁物も副菜のひとつになるので、汁物は大いに活用してください。

その次に多く食べてほしいのが「主菜」です。肉・魚・大豆製品の中から、毎食1~2種類以上取り入れると意識することが理想です。毎食はなかなか難しいので、1日トータルして、肉、魚、卵、大豆製品すべてを食べることが理想です。

牛乳・乳製品、果物もとりましょう。主にビタミン、ミネラルを手軽にとることができます。牛乳、乳製品は、アレルギーがない限りは、成長期は手軽にカルシウムをはじめして様々な栄養素がとることができますので、牛乳、ヨーグルト、チーズなど上手に活用しましょう。

果物は、主にビタミンCや糖質をとることができます。疲労回復だけでなく、鉄やカルシウムの吸収を助けたり、コラーゲンの生成を助けたりします。

毎食この形を整えることが理想ですが、試合のある日や外出した日、体調を崩した日などは整えるのが難しい時もあります。理想は「1日の中で」ですが、難しい場合は3日から1週間のスパンで栄養バランスを整えるよう意識していきましょう。

お弁当箱で整える栄養バランス

次にお弁当箱で、バランスのとり方を見ていきましょう。

基本バランス
弁当箱を6等分して、主食3:副菜2:主菜1の割合で動かないようにしっかり詰めましょう。この割合で詰めると、おおよそ「お弁当箱の容量ml=エネルギー量kcal」だといわれます。1000kcalを摂りたい場合は1000mlの弁当箱を用意しましょう。

色合い
5色の食材を使うように意識しましょう。色々な食材を使うことになり、様々な栄養をとることができます。色鮮やかになり、見た目にも楽しめて食欲をそそります。

好き嫌いしないことのメリット

好き嫌いがなくいつも完食して何でも食べると胃腸が鍛えられ、エネルギーも十分にとれ、栄養が体内できちんと働きます。それによって体がよく動き、集中力もアップ、気持ちもポジティブになって、いつでもチャンスを生かすことができるようになります。

一方、野菜と魚が苦手でいつも好きなものばかり食べていると、胃や腸が鍛えられず、摂取エネルギーも不足して、体内で栄養をうまく働かなくなります。そうすると疲れが残り、ケガもしやすく治りにくくなります。体の調子が良くないと、気持ちもマイナス思考になりがちで、実力を発揮できません。ぜひ皆さんは、自分の実力をしっかりと発揮できる選手になってくださいね。

今回は「サツマイモと枝豆のチーズサラダ」を紹介します。カットされた冷凍のサツマイモと冷凍むき枝豆を使い、あっという間に出来上がるメニューです。

サツマイモから糖質やビタミンC、食物繊維をとることができます。このレシピでは粒マスタードであえていますが、ツナを入れてもいいですね。甘みと塩気が相まって後を引くおいしさです。

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ