私が年間契約している静岡県内のサッカー、ラグビー、卓球などの高校チームでは、2カ月に1回程度、体組成測定と簡易ヘモグロビン測定器を使った測定会の集団指導を実施し、個人的に質問のある選手にも対応しています。この夏からは、コロナ禍で、学業に練習に忙しい選手たちや保護者に対し、弊社が制作しているe-learning方式のスポーツ栄養セミナー(1テーマ10分程度で学ぶ教材付きコンテンツ)を導入し、すき間時間に学習できるようにもしました。自分の体のデータを見ることで、「自分のこと」として理解してもらい、栄養指導を実施しています。

夏休み前半にも、感染対策を徹底した上で測定会を行いました。選手たちは「夏の間に体重が落ちてしまった」「体脂肪を落としすぎてしまった」「体水分量が大きく落ちてしまった(脱水かもしれない)」「ヘモグロビン量が減った」など、自分の体のデータを見て気持ちを新たにした様子でした。現在は、食事を提供しながらの栄養指導が行いにくいため、「食トレ弁当」を提供して、食事内容や栄養素の説明をした動画を各自で視聴する形式をとったり、オンラインでの講義に切り替えたりとできることを模索し実行しています。

そんな高校生アスリートたちから、「体重を増やしたい」という声をよく聞きます。なぜ体重を増やしたいのかの理由とその対策、なぜ増やせないかについて、2回に分けてお伝えしていきます。

むやみに食べて増量することの弊害

まず、体重を増やしたい理由は、成長期では身長を伸ばすため、同時にスタミナやパワーをつけるためでしょう。野球、ラグビー、短距離、水泳などの瞬発力やパワーを要求される競技、柔道などの体重階級制競技では、特に体重を増やすことが日々のトレーニングの一環になっています。私がサポートする若手のプロサッカー選手の中にも、チームから増量を求められて日々努力している選手もいます。

ただ、体重を増やそうとしてやみくもに食べると、体調を崩したり、体脂肪だけが増えて体が重たく感じたり、体重が急に増えることで体が支えきれずケガをしやすくなったり、フォームが変わったりして、パフォーマンスに影響が出ることもあります。

成長期は、非常に多くのエネルギーが必要になります。さらにスポーツをするとなると、生きていくためのエネルギー、運動をするエネルギー、加えて成長するためのエネルギーが必要になることが分かると思います。となると、増量するには、たくさんのエネルギーを計画的、効率的に摂取していく必要があります。

摂取・消費エネルギーのバランス

ウエイトコントロールは、基本的に摂取エネルギー(食事からとるエネルギー)と、消費エネルギー(体内で使われるエネルギー)のバランスで考えます。この2つが釣り合っている場合は、体重は変わりません。

体重を増やすためには、消費エネルギーよりも摂取エネルギーを多くする必要があります。体重が増えていないということは、摂取エネルギー量が足りていないということになります。

今の自分を知らなければ対策できない

「体重をもっと増やしたい」と口にしているものの、「今体重は何キロ?」「ごはんは何グラム食べている?」などと質問しても「分かりません」と言う選手がいます。

自分の今の体重や体脂肪量、筋肉量、食べているご飯の量も分からない選手は、まずは「自分を知ること・現状把握」から始めなければなりません。今の自分を知らなければ、工夫のしようがないからです。今後、過去の自分と比較していくためにも「自分データ」を記録していきましょう。

「自分データ」の記録のポイント

「自分データ」を記録するにあたってのポイントは次の通りです。

(1)体重測定は朝のトイレの後、すぐに行い、記録しましょう
 体重を決まった時間に計らず、1日における変化で一喜一憂する選手もいます。例えば、食後やトレーニング後は食事量や水分量などの影響を受けるので、1キロ前後変動することもあります。一番誤差が少ないと言われる「朝のトイレ後」のタイミングで量り、それを比較していくようにしましょう。

どうしても朝のタイミングが難しいようなら時間を決めて、測った数字を比較していきましょう。可能であれば、体重だけでなく、体脂肪量や筋肉量、除脂肪量が分かる体重計を用意することをおすすめします。最近は、比較的手に入りやすい価格のものもありますから、ぜひ活用しましょう。

(2)食事を記録しましょう
 ご飯量を記録し、スマホで食事写真を撮っておくことをオススメします。後で振り返ることができるので、食材の偏りなどが分かりやすいのです。

最近は、食事記録ができる無料アプリもありますから上手に活用してください。体重を維持するのも増量をするのも、なんとく実行したら、なんとなくの結果しか出ません。プレーもうまくいったりいかなかったりと、ムラのある選手になってしまうでしょう。自分の見える化は、自分で体調をコントロールするためにも大切です。

今回は「うずら卵のカラフルピクルス」を紹介します。以前のコラムで紹介した富士見高校男子サッカー部の講義でも、副菜として使用しました。

食欲をアップさせるためにも酸味のあるおかずは有効です。また、スパイシーな風味と一口サイズも食べやすく、食が進みます。うずら卵は鶏卵と比べて赤血球を作るのに欠かせないビタミンB12や、鉄分や葉酸、ビタミンAなどアスリートに必要な栄養素が豊富です。ぜひお試しください。

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ