私は管理栄養士養成課程のある大学以外にも、スポーツトレーナーを目指す柔道整復師や鍼灸師の国家資格の取得を目指す専門学校で、スポーツ栄養学や現場実習の非常勤講師をしています。ある専門学校の夜間部の1年生は20人程度のアットホームなクラス。日中アルバイトをしたり、別の大学へ通っていたりと様々な環境下にあるので、午後7時半からの授業は夕食を食べながら受けてもいいとしています。そんなある日の出来事です。

専門学校の授業での出来事

最近実施したテーマは「主食、主菜、副菜のそろったものを買ってくる」。まずは授業で主食・主菜・副菜などをそろえることについて教え、食品表示や食品添加物のことも学びました。それをベースにして、コンビニなどで献立を考えて買ってきてもらい、実物を見ながら授業を進めていきます。

先日は、清涼飲料水の話で盛り上がりました。「特保ってどんなルールなんだろう」「特保のコーラには何が入っているんだろう」という話から、「コーラを飲むと骨が溶けると言われて、母親から禁止されていた」「高校の部活の顧問が○○と言っていた」といった話にまで発展し、非常に盛り上がりました。

そんな雑談から食品や栄養に興味をもってもらい、実際に自分のこととして物事を考えることで知識が深まっていきます。授業を聞いて生徒たちは、それまで保護者や指導者から言われていたことが「こういうことだったのか」と理解したり、「全然違うじゃないか」と根拠のないことだったと分かったりするようです。

間違った情報の思い込みは後々の致命傷に

逆に言うと、保護者や指導者の話は聞いていないようでよく聞いていて、覚えているというに驚きました。「子どもが自分の言うことを聞いてくれない」と言う保護者は多くいます。本当に聞いていない場合は、指導者やトレーナー、栄養の専門家など第三者から話してもらうのが効果的ですが、想像以上に子どもは、親の言うことをしっかり聞いているのです。つまり、そこで間違った情報を発信してしまうと、誤った方向に物事が進み、後々の致命傷になることがあるのです。

ネットなどで簡単に情報を得られる今、何が正しい情報なのか判断できない、正しい知識を持っていない、ヘルスリテラシーが低い保護者が多いと感じています。「○○が良い」「△△が良くない」と聞くと、目的や対象者を考えずに、単に「良い」と思い込んでしまう方が多いのを少し残念に思います。例えば、成長期の子どもにとって必要なものと、生活習慣病の大人にとって必要なものは「○○が良い」としても全く違うこともあるのです。

子どもには食の流通の教育も必要

また子どもには、彼らも頻繁に活用するコンビニエンスストアやドラッグストアの商品について、食の流通の教育もしていかなければ伝わらないとも思っています。

「どうしてカロリーゼロなのに甘いんだろう」「飲み物に香料が入っているのはなぜだろう」。そんな疑問から「鼻をつまんで飲むと味が半減するよ」と手を動かし、体験させていくと、学生たちはどんどん食いついてきます。

「食品添加物の使われ方」「プロテインをはじめとするサプリメントの中身」「スポーツドリンクやエネルギーゼリーの中身や使い方」「よく食べるアイスの表示(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓の違い)「清涼飲料水が何からできているか」など、身近な話題で興味を持ってもらうことで、食や栄養の話につなげていくことが重要だと思っています。それらを理解することで、なぜこの食品にこれが使われているのか、それをどんなタイミングで摂るといいのか、良くないのかが分かってくることと思います。

子どもたちは、そういった食品が自分の体の中に入ることで体を作ったり、パフォーマンスを上げたり、自分の思った通りに心身をコントロールするための手段だととらえ、毎日の食に興味を沸かせ、より一層練習に励むでしょう。大人になれば、アスリートだけではなく、私たちも含めたすべての人にとって自分のカラダに入れるものは、すべて自分の責任となります。知識の押し付けにならないようにしながら、上手に伝えていきましょう。

今回紹介するのは「トウモロコシとじゃこの炊き込みごはん」です。

6月中旬から7月はトウモロコシがおいしい季節です。静岡には有名なトウモロコシ農園が各地域にあり、お土産にしても大変喜ばれます。

トウモロコシは炭水化物のほか、リノール酸、各種ビタミン・ミネラル、食物繊維なども含まれ、栄養価が高い
トウモロコシは炭水化物のほか、リノール酸、各種ビタミン・ミネラル、食物繊維なども含まれ、栄養価が高い

トウモロコシは米、小麦とともに「世界の3大穀物」と言われています。炭水化物が主成分ですが胚芽の部分には、リノール酸、ビタミンB1、B2、Eやカリウムなどのミネラル、表皮には食物繊維も多く含まれ、栄養価も豊富です。

食用のトウモロコシは一般的には「スイートコーン」です。今は色々な種類が出回り、ゴールデンコーン(黄色系)のゴールドラッシュや味来(みらい)、シルバーコーン(白色系)の「ピュアホワイト」は近年人気ですね。バイカラーコーン(黄色と白色の混合食)では甘々娘やピーターコーン、ゆめのコーンが有名です。

糖度も高く、生食もできる品種も多く出回っていますが、できるだけ採った日のうちに食べましょう。時間が経過すればするほど糖度が下がります。焼いたりふかしたりして、そのままの味を十分に堪能したら、炊き込みごはんにしてみましょう。自然の甘味が引き立ちます。ぜひお試しください。

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静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ