食事摂取基準(2020年)による鉄の1日の推奨量は、成人男性7.0mg、成人女性(月経あり)10.5mgですが、月経のある女性の約半数が貧血、または貧血予備軍だといわれています。

特にアスリートはスポーツ貧血(衝撃で赤血球が壊れる)のリスクが高く、運動中の酸素の運搬や壊れた筋肉の修復などで鉄の需要が増えるため、1日15~18mgの鉄が必要とされています。女性だけでなく、男性も意識して鉄の多い食品を摂取していることでしょう。

鉄を多く含む食品、貧血予防におすすめのレシピについては、アスレシピでもたくさん紹介しています。これらを参考にバランスのとれた食事をとっていれば、1日15~18mgの鉄も十分にとれます。さらにもっと手軽なもので、ちょっとプラスするだけでおいしく効果が期待できる食品があると便利ですよね。今回は「意外に鉄が多い食品」を紹介していきましょう。

チョコレートやココア

チョコレートやココアの原料、カカオ豆には鉄だけでなく、造血に必要なマグネシウムや骨折予防のためのカルシウムも多く含まれています。おやつや飲み物として手軽に摂ることができ、なんと言ってもおいしいのが継続できるポイントです。甘いものが苦手な人も、純(ピュア)ココア(注1)であれば甘くなく、牛乳や豆乳に混ぜたり、ヨーグルトに振りかけたりして摂りやすいでしょう。

豆菓子

大豆製品に鉄が多いことは知られています。大豆以外でも、小豆などの黒っぽい豆には鉄が多く含まれますが、グリーンピースやソラマメなど、他の色の豆類にも鉄が含まれています。小豆やきな粉を使った和菓子(注2)や、フライドビーンズなどの豆菓子をおやつや補食に摂っても良いでしょう。

カレー粉やコショウ

1度に使う量は少ないものの、カレー粉やコショウ(注3)にも鉄が多く含まれています。香辛料には減塩効果や抗酸化作用もありますので、食塩を控え、スパイシーな味付けを心がけると鉄の摂取量を増やせます。同じ砂糖でも、精製した白砂糖より精製されていない黒糖やキビ砂糖の方が鉄をはじめ、カリウムなどのミネラルが多く含まれます。調味料もそのようなことを意識して使うと、わずかではありますが、鉄の摂取を増やせます。

ポップコーンやポテトチップス

精製されていない穀類は胚芽の部分に鉄が多く、胚芽も含まれるポップコーンやライ麦パンにも鉄が含まれています。ポップコーンは家で簡単に作れますし、サンドイッチなどもライ麦パンを使うと、鉄の摂取を増やすことができます。また、ジャガイモを揚げただけのポテトチップス(注4)も栄養素が濃縮されているので、意外に多くの鉄を含んでいます。

ピーナッツバター

ゴマやカシューナッツ、アーモンドなどのナッツ類は、カカオ豆と同様に鉄、マグネシウム、カルシウムなどを多く含んでいます。ナッツ類が原料のピーナッツバターにも鉄が多く、パンにぬるだけでなく、あえ物の調味料として使うことで鉄の摂取を増やせます。ただ、鉄を意識するあまり食べ過ぎて、エネルギー過多にならないよう調整してください。

なお、鉄の過剰摂取も内臓に蓄積し、体に害をもたらすことになります。特にジュニアアスリートは食事から摂取することを第一に考えましょう。

【管理栄養士・今井久美】

※日本食品標準成分表2015年版(七訂)による100gあたりの鉄の含有量
注1=ピュアココア(14.0mg)
注2=甘納豆(あずき2.1mg、いんげんまめ1.6mg、えんどう1.3mg)
注3=カレー粉(28.5mg)、黒コショウ(20.0mg)
注4=ポテトチップス(1.7mg)