<キッチンは実験室(68):レンコンの科学>

キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。おせちや精進料理に欠かせないレンコンは、どうして穴が空いているのでしょうか。また部位によって、調理法によって味わいが違うのをご存じですか? 今回は、秋から冬が旬の「レンコン」を科学していきます。

レンコンに穴が空いている理由

童謡「おべんとうばこの歌」の「♪穴~のあいたレンコンさん」の歌詞でもおなじみのレンコンは、地面の下にある蓮の茎(地下茎)に栄養がたまって太くなったものです。漢字で書くと「蓮根」ですが、厳密に言うと蓮の茎で、根ではないんですね。

横に切ると、あの丸い穴が行儀よく並んでいます。並び方が同じなのはどうしてだかわかりますか?

レンコンは田んぼや池が大好きで、畑ではうまく育ちません。ただし、植物が育つには酸素が必要。しかし、水中には酸素が少ないため、水の上に出ている葉の小さな穴から空気を取り入れて、茎の中に穴をあけて、水底にある茎の先まで効率よく酸素を送るように進化したのです。

実は根でなく「茎」、穴は10個?!

茎はずっと連なって、その節々から出ている根にも酸素を供給しています。実際に蓮の茎の断面を見ると、穴が空いているのがわかるでしょう。つまり、レンコンのどこを切っても穴が空いているのは、穴が葉から茎の先までずっと縦につながっているからなのです。

一般的には、レンコンの穴は中央に小さいものが1つ、それを取り囲むように周りに約9個あるとのこと。種類によっても違いますが、小さいものだと7個、大きく育ったものだと11個の場合もありますが、ほとんどが奇数のようです。

柔らかく生で食べられる部位は

レンコンは9月頃から収穫が始まり、12月に最盛期を迎える冬野菜。冬に近づくほど粘り気が出て、甘味が強くなるのが特徴です。

そのレンコンには「節」があり、部位によって味わいや適した料理、栄養価も異なります。先端ほど柔らかいのでサラダに、中央は天ぷらや水煮、根元は固めなので煮物やきんぴらにすると、よりおいしくいただけます。

先端=小さくて柔らかい。ビタミンが豊富
根元部分=大きくて寸胴。でんぷんが豊富

スーパーでパック詰めされている場合、先端か根元かをどうやって見極めるかというと、「一節目(先端)は根がついている」「根元の方は寸胴で大きいもの」が選ぶポイントとなります。

歯ごたえを残す切り方は

また、レンコンは切り方によっても使い分けできます。穴と並行に繊維があるため、穴を上に見て、縦に切る(繊維に沿って切る)と歯ごたえが残り、カリッとした食感になります。横にして繊維を断つように切ると、柔らかな食感になると言われています。

レンコンを切った時、包丁が糸を引いたことはありませんか。これは多糖類の一種で、このネバネバ成分は胃腸の粘膜を保護する働きがあると言われています。オクラや納豆のねばりと一緒です。

レンコンを酢水につけておく理由

レンコンを切った後に酢水につけることがありますが、その理由をご存じですか。

色を白くする

1つ目の理由は、色を白くするためです。レンコンにはポリフェノールが含まれているため、空気に触れて(ポリフェノール分解酵素による)変色するのを防ぐ目的があります。白い色素であるフラボノイド色素は酸性で、黄色から白色になるので、酸性である酢水につけるとより白さが際立つのです。

酢レンコンが白くておせちに鮮やかさをもたらすのは、酢の効果があります。一方で、煮しめやきんぴらなど、しょうゆを加えて色濃く煮るときなど、色を白くする必要がなければ、酢水に漬けなくても良いでしょう。

食感をシャキシャキにする

2つ目の理由は、シャキシャキな食感を出すためです。レンコンには、食物繊維のペクチンがあり、細胞と細胞をつなぎ合わせる接着剤のような役割をしています。そのため生で食べるとさくっと歯応えのある食感が味わえます。

ペクチンは加熱によって分解されてしまいますが、シャキシャキな食感を残したいときは酢の力を借りましょう。酸性の力で酵素の働きを変えて、ペクチンの分解を防いでくれるのです。

目安としては、「水600mlに酢大さじ1」を加えると、白いレンコンをシャキシャキに味わえます。もちろん、茹でたり、煮たりする時間が長くなればなるほど食感は崩れていくので、加熱しすぎに注意しましょう。

腐った?黒く変色したときは…

ちょっと古くなった、使いかけだったというレンコンの断面が黒くなった経験はありませんか。もう食べられない…と捨ててしまった人はいませんか。

これは腐ったわけではありません。皮をむいたリンゴが茶色くなったり、生のゴボウが茶色くなったりするのと同じく、酵素のポリフェノールによる変色なのです。レンコンにはタンニンというポリフェノールが含まれており、空気に触れると変色が進みますが、食べても問題はありません。白くしたい場合は、酢水に漬けると良いでしょう。

おいしいレンコンの選び方、保存の仕方

ここまで説明してきたことから、おいしいレンコンの選び方をまとめましょう。

<レンコンのおいしい選び方>

見た目はふっくら、持ったときにずっしりと重さがある
表面に艶がある
カットされている場合、切り口が変色してない、穴の中が黒ずんでない

また保存するときは、切り口が空気に触れないようぴったりとラップで包んで冷蔵庫に入れ、早めに食べましょう。

作ってみよう!野菜スタンプ

レンコンを使った「野菜スタンプ」に挑戦してみましょう。水彩絵具やスタンプ台を使って厚紙に押して絵を描けば、オリジナル葉書の完成です。年賀状にもおすすめですね。

アクリル絵の具を使えば布に押すこともできるので、世界で一つだけのTシャツやトートバックも作れます。親子で「レンコンの科学」を深めてみてはいかがでしょうか。