<キッチンは実験室(58):フラボノイドの変色の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回は、冬が旬のカリフラワーに注目してみましょう。なぜ白いのか-その理由を解き明かすと、中華麺へとつながります。食品の白い色に科学が隠されています。

酸性やアルカリ性を応用して

カリフラワーの薄い色はフラボノイドという天然色素です。そのカリフラワーを茹でるとき、「酢を入れると白く仕上がる」と聞いたことはありませんか? 

以前、「梅と梅干しの科学」で、「酸性やアルカリ性の影響で野菜の色が変わる」という話をしました。紫色の野菜に含まれる紫色の色素(アントシアニン)は酸性だとピンクに、アルカリ性だと青に変わると説明しましたが、白い色素(フラボノイド)も同様に、酸性だと白に、アルカリ性だと黄色に変わります。

そこで、カリフラワーをより白く茹でたい時は、酸性である「酢」を加えると良いのです。

<カリフラワーを白く茹でる方法>
・カリフラワー…1株
・水…500ml
・酢…大さじ1/2

(1)水を入れた鍋を火にかけて、沸騰したら酢とカリフラワーを入れて2~3分茹でる。
(2)茹で上がったらザルに移し、粗熱がとれたら出来上がり。

カリフラワーとブロッコリーの違い

カリフラワーは、キャベツや菜の花と同じアブラナ科の植物で、ブロッコリーの“弟分”です。ケールを祖先とし、キャベツが突然変異したのがブロッコリーで、それがまた突然変異したのがカリフラワーだと言われています。

白いカリフラワーは、食べる部分を日光に当てないように育てるので白くなりますが、もともと緑色になる遺伝子を持っていないので、日に当ててもブロッコリーにはなりません。ただ今では、つぼみを日光に当てた黄色やオレンジ色の品種や、紫色のものも出回っています。

栄養価を比べてみると、ブロッコリーの方がビタミンCの含有量は多いものの、カリフラワーのビタミンCは熱に強いため、加熱調理をすると同じぐらいの量になるという報告もあります。そのため、カリフラワーは「畑のレモン」と呼ばれることもあるのです。

ゴボウの下処理で「酢水」につける理由

さて、フラボノイドをより白くする酢水の効果は、他の食品でも利用されています。例えば、ゴボウの下処理。ゴボウに含まれる茶色い色素(ポリフェノール)は酢水のような酸性につけると白色に、アルカリ性では黄褐色になります。

そもそもゴボウを切ってそのままにしておくと、酵素による酸化反応で色が褐色に変わってしまいます。皮を剥いたリンゴやバナナが茶色くなるのと同じで、酵素(ポリフェノールオキシターゼ)の働きによるものです。酸化を防ぎつつ、白さを生かすため、ゴボウを酢水につけるのです。

酢水につけると、野菜の種類によっては別の効果も生じます。サツマイモやニンジンを酸性のレモンで煮ると、煮崩れせず、硬めの食感が残ります。レンコンでは粘り成分が酢と反応し、シャキシャキと独特な歯ごたえを楽しめます。

※参考:pHとも関係、大豆と煮るとニンジンは軟らかくなる/キッチンは実験室(6・下)

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