<キッチンは実験室(45):田作りと砂糖の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。そろそろおせちの準備を考える頃。今回は田作り(ごまめ)の作り方を見ていきながら、砂糖の科学を紐解いていきましょう。最後には、親子で簡単に作れるおせちレシピも紹介していますのでお楽しみに! ぜひご家庭で作ってみてくださいね。

砂糖を煮詰めるとカチカチになる理由

砂糖液は加熱する温度によって、サラサラのガムシロップ、飴状、カラメルソースと、形や状態を様々に変えていく特徴があります。砂糖の主成分であるショ糖(スクロース)は水分子と引き合う状態をとっています(水和)。水が不十分になると、砂糖の分子同士が引き合って鎖状になり、粘りがでます。熱を与え続けると、粘り気がおいしい水飴のような状態に変化するのです。

砂糖の温度の目安は「泡」

砂糖の加熱温度において、砂糖の沸点と砂糖液の濃度(粘り)には関係性があります。砂糖液は、濃度が高くなるにつれて沸点が高くなります。そのため、煮詰める温度が高いほど濃度が高くなり、粘り気も出てきます。田作りは、この粘り気の出た砂糖が小魚に絡みつく、そんなイメージです。

<温度による砂糖の状態の変化>
103~105℃=シロップ
無色透明で濃厚な液体。水に溶けるので冷たい飲み物に使われます。
107~115℃=フォンダン(砂糖衣)
冷ましながらまぜると砂糖が再結晶化し、菓子パンなどにかかっている白い砂糖衣に。
140℃=タフィー
冷めるとガリガリした結晶に。キャンディーなどに。
160℃=べっこう飴
糖が分解して(転化糖)、香ばしい香り、冷めると飴状になる。
165~180℃= カラメルソース
茶褐色で香ばしい香り、プリンのソースなど
190℃=カラメル
黒褐色になり、甘みから苦味へ。ソースやしょうゆ、コーラの着色料に使われる。

火を止めるタイミングは?

砂糖の状態の変化を踏まえ、失敗しにくい田作りのコツは次の通りです。

鍋全体に泡が出るまで煮立てる

鍋で煮立てる際に、田作りのような粘り気が出てくる砂糖の温度の目安は110℃。つまり、細かい泡が出てきても加熱を続ける必要があり、鍋全体の底から白い泡が全体に広がって泡が大きくなり、少しとろみがつくまでが目安です。

煮立てておくときにかき混ぜすぎない

砂糖を加熱する際にかき混ぜると、再結晶化、飴衣のような白いつぶつぶの結晶(フォンダン)になってしまうことがあります。そのため、調味液(しょうゆ、砂糖、みりん)を先にかき混ぜてから火をかけて、弱火〜中火で泡が立つまで混ぜすぎず、ゆっくりと加熱していきましょう。

合わせる時は火を消し、熱いうちにゴマも

飴は冷えて固まる特徴があるため、冷める前にいりこやゴマ、ナッツと混ぜ合わせましょう。火を消してから混ぜることで砂糖が飛び散るリスクも減り、子どもでも簡単に調理することができます。

カラメルソースがカチコチではない理由

カラメルソースを手作りする際に、差し水を入れる方法があります。これはカラメル色まで温度を上げて煮詰めたままでは硬くなってしまうので、お湯を入れて焦げを残しつつ、濃度を緩くするためです。

アイスはガムシロ、ホットには粉砂糖なのは

コーヒーのアイスにはガムシロップ、ホットにはスティックシュガーなのはどうしてだか分かりますか? 砂糖は温度が高いほど粒(砂糖の結晶)が溶けやすいので、ホットコーヒーにはそのままの形で、アイスコーヒーには溶けにくいので、ガムシロップを使っているのです。

では、ホットコーヒーにもガムシロップを使って大丈夫でしょうか。

砂糖の甘さとしてはOKですが、液体を入れることで温度が下がったり、薄まってしまったりするデメリットがあります。アイスコーヒーはそもそも氷で薄まることも想定していますよね。

また、ガムシロップの中には、加工してある糖(果糖ぶどう糖液)が主成分のものもあり、その場合は果物の甘さと一緒で、冷やすと甘さが1.3倍増し、一方で温度を上げると甘みが0.8倍まで感じないというデータもあります。

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