<キッチンは実験室(26):味覚と温度の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。これから先、冷たいものが欲しくなる季節です。今回は、科学内容を踏まえ、温度やテクスチャーで味が変わることを紹介します。

最も甘く感じる温度がある

アイスクリームをゆっくり食べていると、最後にアイスの液体が溶け出してきます。それをなめると、甘ったるく感じたことはありませんか? かき氷も、シロップをたっぷりかけて食べるシャリシャリな氷部分はおいしいのに、器の底に沈む水っぽいところは、あまり飲めたものではありません。

一方で、熱いコーヒーに砂糖を入れて飲むとおいしいのに、冷めると甘くて飲めないこともあります。

味覚の科学において、私たちが食べ物の味を「味」と認識する刺激には強さがあり、閾値(いきち)と呼ばれます。その刺激の強さは、温度によって変わると言われています。

甘味は、体温に近い35℃で最も甘く感じ、冷やしたり、温めたりすると感じにくくなると言われています。つまり、溶けたアイスやぬるいコーヒーの温度は、より甘く感じる温度なのです。

冷めたスープはしょっぱい?

一方で、「塩味」は温度が低くなるほど感じやすくなる特徴があります。そのため、コトコト煮込んだスープに塩を足して、ちょうど良い味付けになったと思っていても、冷めたらしょっぱすぎたという失敗を起こしやすいのです。

味には5つの味(基本五味)がありますが、味によって感じる温度はすべて違います。

苦味は冷たいと感じやすくなります。例えば、冷たいアイスコーヒーは苦味を感じやすく、また冷たいと甘味を感じにくくなるため、ホットコーヒーよりも相当多くの砂糖を入れてしまう人が多いようです。

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