<キッチンは実験室(40・上):野菜と浸透圧の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。スーパーでは夏野菜が並び、塩もみしたキュウリなど、野菜をそのまま食べるのがおいしい季節になりました。ところで、キュウリを板ずりや浅漬けするとしんなりするのはなぜか、考えたことはありますか? 今回は日頃、何気なく行っている下ごしらえや調理の科学についてお話しします。

塩もみで野菜がしんなりする原理

キュウリやキャベツを切って塩もみすると、しんなりするのは、野菜から水分が出ているからです。この原理を「浸透圧」と言います。

野菜の細胞には壁の周りに膜があり(細胞膜)、半透性という機能があります。半分透過する、つまり水は通すけれど、食塩や砂糖水(溶液)は通しにくいという性質です。その上、水分の濃さを常に一定にしようとする働きがあるため、野菜の細胞に含まれる水分は変化するのです。

野菜より周りの濃度が低い(例:水)
 野菜の中の濃度が高いため、外の水分が野菜の中に入ってくる。
 →野菜の細胞内に水が入り込んで膨れ、千切りキャベツのようにパリッとする。

野菜より周りの濃度が高い(例:塩水・ドレッシング)
 野菜の中の濃度が低いため、外に水分が出ていく(脱水)。
 →野菜の細胞内の水分が抜けて、しんなりする。

このように浸透圧によって、野菜がパリッとするか、しんなりするか、変わるのです。まさに「青菜に塩」ということわざ通り。特に濃度が2%以上の塩水は、野菜から水を吸い出すことができるとされています。

板ずりする理由と効果

キュウリやオクラなどは、下ごしらえとして「板ずり」をします。野菜を洗ってから塩をまぶしてすり込み、まな板の上でゴロゴロ転がすことです。

そうすると、浸透圧の効果で軽くしんなりして、キュウリの細胞に含まれているアクが水分と一緒に抜けます。調味料も染み込みやすくなり、緑色も鮮やかに、表面が滑らかになるのです。特にオクラは表面の産毛がとれて、滑らかになります。約2%の食塩を加えて5分間おくと、キュウリの水分の20~30%、15分間おくと40%近くの水分が抜けると言われています。

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