<キッチンは実験室(22):お魚の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。冬においしい脂ののったブリ。しかし、生臭くなってしまったり、煮崩れしてしまったり…といったことはありませんか? しかし、科学を知れば、失敗なく作れるのです。今回は「お魚の科学」です。

刺身編:マグロは厚く切るのに鯛は薄く切る理由

同じ刺身でも、マグロやカツオなどの赤身魚は厚く、フグや鯛などの白身魚は薄くそがれていることにお気づきですか?

刺身で食べる部分は、魚の筋肉部分。筋肉は多数の筋繊維が束ねられていて、コラーゲン(結合組織)で覆われています。白身魚はこの結合組織が多いため、しっかりとした筋肉になり、歯ごたえが強くなります。対して赤身魚は、白身より結合繊維が緩く、筋肉中のうまみ成分が多いので、より味が濃く感じられてとろりとした食感になります。

このように、赤身魚は水分が多く、身が柔らかいので、薄く切ると歯ごたえが足りなく感じられるので厚切りにします。一方で、身のしまった白身魚を同じように厚く切ってしまうとかみ切れなくなってしまうため、薄切りにするのです。

赤身か白身かは、筋肉中の血液の色素の色(ミオグロビン)の含有量により、区分されます。

赤身=マグロ、カツオ、サバ(回遊魚)…こってりとしたうま味がある
白身=カレイ、ヒラメ、タイ…あっさりとした淡泊な味わい

サケは赤身と思われがちですが、白身に分類されています。身が赤く見えるのは、エビやカニにも含まれるカロテノイド系色素、アスタキサンチンが含まれているため。エサとしているオキアミなどの動物性プランクトンに含まれている色素です。

同じくオキアミを食べるカニやエビは殻が、鯛や深海魚の表面も赤いのですが、サケだけは筋肉組織にアスタキサンチンを取り込むため、身が赤くなると言われています。

アスタキサンチンには抗酸化作用があるという研究が明らかになっており、サケはこれを筋肉に取り込めるおかげで瞬発力の優れた速筋を活性酸素から守り、運動して増えた活性酸素を除去して、川を上り、泳ぎ続けることができるとも言われています。

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