煮魚編:崩れやすい魚、硬くなる魚

カレイの煮つけは箸で身がほぐれるのに、マグロのステーキは包丁やナイフでないと簡単に切れない、という経験をしたことはありませんか? 魚は加熱するとタンパク質の多くが熱変性によって硬くなり、固まりますが、タンパク質の種類によっては柔らかくなるものもあるのです。

肉基質タンパク(カレイ、キンキ)
 40℃くらいから収縮を始め、その後、分解されて溶けていきます。カレイやキンキの煮つけなど。箸でもほぐれる。

筋形質タンパク(カツオ、サバなど)
 65℃以上でタンパク質が凝固して硬くなり、温度の上昇とともに凝集が進む。硬く均一に固まり、かつお節のような「節」加工ができる。

筋原線維タンパク(鯛、タラ、ヒラメ)
 筋繊維が太く、もろく、崩れやすい。50℃で細胞間の結合が緩み、その後、硬くなる。

魚に熱を加えて約40℃になるとタンパク質が溶け出す量が多くなりますが、それ以上の高温になると、凝固して硬くなります。この特徴を利用して、煮魚を作るときは、一度調味料を鍋の中で煮立たせて(調味料が合わさるようにも含め)、高温の調味液で加熱して切り身の外側を固まらせて、中のタンパク質が溶け出すのを防ぐことが大切なのです。その後、弱火にして中まで火が通るようにするのが、栄養素を逃さず、おいしく食べるポイントです。

振り塩をする理由

焼き魚や煮物の前に塩を振りかけるのは、魚の肉を構成する筋原線維タンパク質が塩で溶けるため、保水性が増して、熱を加えたときに重量が減るのを少なくするためです。 ただし、水分が染み出るときに魚の臭みの素となる成分(トリメチルアミン)も一緒に流れてくるので、しっかりとキッチンペーパーでふき取りましょう。

塩を加えて練り物作り

また、魚肉に塩を加えてすりつぶすと、粘りのあるペーストとなり、さらに加熱すると弾力のあるゲル状になるものがあります。イワシのつみれ団子、カマボコ、白身のすり身、おでんの練り物、ちくわなど。

塩を加えてよく練ると、筋原線維タンパクのアクチンとミオシンがくっついて(アクトミオシンを形成)、水の中で混ざって網目構造を作り、加熱で変性してゲルを作るためです。

塩を入れないとバラバラになり、みりんや砂糖で味と色を付けたものが、いわゆる「桜でんぶ」です。ハンバーグの科学で塩を入れてこねると、粘りが出てまとまるのに、塩を入れないとそぼろ状になると紹介しましたが、肉も魚も同じタンパクなので、原理は同じなのです。

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