ゆっくり適温で消化酵素が働く

石焼き芋が甘くなる理由も同様に、「消化酵素」の働きによるもの。唾液に含まれる消化酵素のアミラーゼは動物性ですが、サツマイモには植物性のそれが含まれています。

消化という体内の化学反応を助ける働きがあり、消化吸収を良くしてくれる酵素は、ある特定の温度でしか働かず、熱すぎても、冷たすぎても働かないという特徴があります。適温は35~60度とされており、電子レンジや鍋などで、強火で一気に加熱すると壊れてしまいます。しかし、石焼き芋のようにじっくり、ゆっくり加熱すると活発に働き、でんぷんを糖に変えながら甘くしてくれるのです。

他にもある、酵素で甘くなるもの

このように、酵素を使って甘くなるものは他にもたくさんあります。

例えば、甘酒。お米に米こうじを加えて温かい状態で放置しておくと、出来上がります。サツマイモやお米に麦芽を入れて糖化させ、それを煮詰めると、甘い麦芽水あめができますし、もち米に米こうじと焼酎を加えて発酵させると、本みりんができます。砂糖が貴重だった時代、酵素を使って自然由来の甘さを引き出し、調味料にしていたのですね。

同じ食べるなら、よくかんで、唾液に含まれる消化酵素を働かせ、消化吸収を高めた方がいいですよね。「しっかりかむ」ということから近年、歯科領域でも食育が急速に普及しています。よくかむためには、硬めの食材を選ぶ工夫も必要。何を食べるか、どう食べるかのほかに、しっかりかんで食べられるかも含めて、考えられるようになるといいですね。

家でも作れる石焼き芋

さて、石焼き芋が甘い理由は「低温でゆっくりじっくり加熱すること」でしたね。それを応用すれば、家庭でも作ることができます。

<オーブンで作ろう!石焼き芋>
(1)サツマイモを濡れた新聞紙で巻き、さらにアルミホイルで包みます。
(2)160℃、余熱なしのオーブンに入れて1時間~1時間半加熱します。
(3)串を指して火が通っているのを確認。焼き終わったら冷めるまで放置。
※オーブンがない人は炊飯器で温めでもできます。

そのまま食べてもいいですが、砂糖控えめのスイートポテトや、芋きんつばにも応用できます。ぜひ家庭で実践してみてくださいね。

味覚の1週間…10月15日~19日は「味覚の一週間」でした。よくかむことで、食べ物のおいしさも味わえると考えています。よくかんで強い体と豊かな心が作られていきますように。