<キッチンは実験室(8):味覚の科学とおいしさ(下)>

 みなさん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)の「みせす」です。前回のコラム(「見た目にだまされる味覚、大半はにおいから」)で、味覚を感じる五味についてお伝えしましたが、さらにおいしく感じるポイントがあります。

食感、聴覚との関係

 グミは水あめ、ジュース、ゼラチンで作られています。ゼラチンを入れる量でぷるぷるのゼリーになったり、ぐにゅぐにゅした固い食感のグミになったりします。歯ごたえの違いで味が変わるのです。

 この歯ごたえや舌触りでの味覚については「温度で変化、弱火で煮るとニンジンは硬くなる?」のコラムでも述べました。噛み砕かれた食べ物から香りが口の中に充満し、鼻を通じて食べ物の風味が広がります。

 噛むことは満腹感を増したり、あごを発達させたり、唾液の分泌を増やして消化を良くしたりします。子どもたちに「よく噛んで食べなさい」と言ってもなかなか伝わらないときは、あえておかずに固い食べ物を並べたり、調理法で工夫してみたりするのも1つの手です。

 この歯ごたえに関連するのが聴覚です。口の中でシャキシャキといった音や、食べる空間、外部からの音で、さらにおいしさが広がります。

おいしく味わえる人に

 ここまで「五味」「五感」を使ったおいしさの科学を説明してきましたが、それらを超えたところにも、味わいの秘訣があります。食材や料理の味だけでなく、私たちの心と体の状態や環境、一緒に食べる人など周囲との社会関係です。

 「おいしい」を漢字にすると、「美味しい」。つまり、食べ物の「美しさ」を「味わえる」ということです。同じ食べ物でも人によって味わい方は全然違います。味わうとは、想像力を働かせること。食べたものを、言葉で表現すること。これは、想像力や語学力にもつながりますし、心を豊かにする時間そのものだと言っていいでしょう。

 おいしさを味わえる人は、人生を味わえる人。栄養には、体の栄養だけでなく、心の栄養もあります。スポーツや勉強に忙しい子どもたち。たまには家族一緒に、こんな科学実験を通じて、食を楽しく見つめ直してみてはいかがでしょうか。

*<基本五味を当てよう!味覚クイズの方法>*

 それぞれ透明なコップに水200mlと(1)~(5)をそれぞれ入れ、味わいを当ててみてください。

(1)塩味:0.1g(塩)
(2)酸味:2ml(米酢)
(3)苦味:3ml(にがり)
(4)甘味:0.5g(グラニュー糖)
(5)うま味:3cm角の昆布(一晩水出し)

※あくまでも簡易化したもので、実際の味覚検査や官能評価とは濃度が大幅に異なります。

*<「はちみつレモングミ」の作り方>*

材料
・ゼラチン…5g(1袋)
・はちみつ…大さじ1
・レモン果汁…大さじ2
・水あめ…大さじ1~2
・着色料(赤・黄)…少々

作り方
(1)紙コップに材料をすべて入れて軽く混ぜた後、電子レンジ(500W)で30秒加熱。
(2)溶けたら熱いうちにグミ型に流し込む。
(3)冷蔵庫で約1時間、冷やし固める。
(4)グミ型から取り出す。

※着色料は安全が認められているものを微量使用しますが、着色料に抵抗がある方は紅麹パウダー(赤)、くちなし(黄色)を代用してください。両方とも製菓専門店で購入可能。紅麹パウダーの場合はレモン汁に溶かし、くちなしの場合は作る前にレモン汁に浸しておいてください。

金子浩子

子ども向け食育ボランティア団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」代表・講師
東京薬科大生命科学部卒/群馬大学大学院修士(保健学)。中・高校教諭一種免許状(理科)取得
国際薬膳師・国際薬膳調理師・中医薬膳師。キッズキッチン協会公認インストラクター。エコ・クッキングナビゲーター