令和6年1月1日に起こった能登半島地震で、富山県氷見市に本拠地を置くハンドボールの日本リーグ、富山ドリームスの選手たちも被災しました。当時の様子を前田理玖(りく)選手、森康陽(こうよう)選手にインタビューする後編では、食事やトレーニングの状況について、今後の対策などについて聞いていきます。

「がんばろう北陸」の横断幕を掲げる富山ドリームス
「がんばろう北陸」の横断幕を掲げる富山ドリームス

―被災した当時、どのような食事ができたのでしょうか

前田 正月だったこともあり、祖父母からいただいたフルーツなどが車にありました。その他、避難所で備蓄してあったおかゆや水、ビスケットで空腹をしのぎました。避難所には、避難者全員に配れるくらいの十分な食糧があり、レトルトのおかゆがおいしかったですね。2日は家にある食事で対応できました。2日目の朝にコンビニに行ってみましたが、多くの人が訪れていて、断水が続いていたため、水が売り切れていました。

―(私が住む)富山市でも、ドラッグストアは開店前に行列ができていて、早々に水は売り切れていました

 避難所では非常食と水をもらいました。1日の夜は避難所でレトルトのごはんとビスケットも食べました。慌ただしかったので、おなかが空いたとかそんなのではなく、なんとなく満たされたという感覚ですね。非常食はおいしかったよね?

前田 レトルトのおいしかったですよ。初めて食べました。

 お正月だったので、おせち料理やオードブルが家にあって、2日目からはそれを食べていました。電気は大丈夫だったので冷蔵庫は使えて、冷蔵庫の食材も食べていました。カセットコンロもあったので調理できましたが、断水で水があまり使えないので、皿にラップを巻くなどとりあえず汚さないように工夫して、水を使わないようにしました。給水所が開設されていたので、タンクで水をくみに行っていました。あとは川が近いので、川の水をくんで使いました。断水は1週間程度続きましたが、これまで経験したことがなかったので、水が使えないのがほんとうに辛かったですね。近所の1人暮らしのおじいちゃん、おばあちゃんたちの生活も手伝わないといけなかったですし。

避難所で物資運搬する森選手(写真は一部加工)
避難所で物資運搬する森選手(写真は一部加工)

―確かに、断水は確かにあまり経験しないですからね

前田 家にウォーターサーバーもあって良かったと思いました。

 タンクを買って給水に行きましたからね。

―食べるものがなくて困ったということは特にはなかったのですね。また、お正月でおせち料理やオードブルなどが揃っていて、果物など日持ちするものや持ち運びができるものなどもあり、炭水化物ばかりといった特定の栄養素の偏りもなかったのですね

前田 はい。コンビニも営業していましたし、本当にお正月だったので、食べ物はありました。

 特になかったです。お正月用の食べ物はありました。お店も営業していました。水だけです。

―チームはお正月のオフ期間でしたが、トレーニングなどはどうしていましたか

 しばらくは家の片付け、割れたものや壊れたもの、散乱した家具などを片付ける、水を運ぶことなど、生活を元に戻すことでいっぱいでした。重いものを運んだり、戻したりすることがトレーニングになっていました。本格的に練習となったのは、8日のチーム練習からですね。

前田 3日目からしばらく県外の実家(福井県)に帰りました。氷見ではお風呂に入れないので、走ったり汗をかくようなトレーニングはできませんでした。福井に帰ってからは山を走ったり、少しずつトレーニングを戻していきました。

―なかなかトレーニングできる状況ではないですし、断水もあり、なるべく水を使わないようにするとお風呂に入ることは難しいですね。生活を取り戻すのに必死だったんですね。では最後に、今後の対策やどんなことをやっておくべきだと思ったか教えてください

前田 玄関先など、すぐ取り出せる場所に非常食や水の準備が必要だと感じました。特に、断水となることも予想し、水の貯蓄は最優先だと感じています。実家では玄関先に非常用に持ち出すものが用意されていたのですが、パニックに陥り、全く気づきませんでした。とりあえず、津波から逃げることに必死でした。命が最優先でした。玄関に用意してあっても、パニックになると忘れてしまう、考えが及ばなくなります。

 食料としては、今回の非常食のようなビスケット、水などは家でも備蓄しておく方が良いと思います。また寒さという点では、カイロや布団のセットかな? カッパ、カイロ、非常食などはナップザックに入れて、玄関に置くか車に積んでおきたい。また、電気がなく料理することを考えると、カセットコンロと鍋、バーナーとかあるといいと思った。また、避難道具をすぐ持ち出せるように日頃から準備はしておくことが大切だったと思います。

高校ハンドボール部とボランティア活動

被災した選手から緊迫感の伝わる、貴重な話を聞くことができました。幸いチームの選手、スタッフ、その家族に大きな人的被害はありませんでしたが、家の損壊などがあり、いまだ通常の生活に戻っていないスタッフもいます。

そんな中、多くの皆様のご協力のもと1月8日より高岡市の竹平記念体育館を使用し、練習を再開することができ、2月10日から再開したリーグ戦を戦っています。ただ、震災の影響で会場が使用できず、2月12日に予定されていたトヨタ合成ブルーファルコンとのホーム戦は4月29日に延期となりました。

今も揺れを感じることも多いですが、2月11日には富山工業高校、氷見高校、長野南高校ハンドボール部と一緒に、氷見市のがれきの清掃など災害ボランティアを行ったり、氷見警察署の「復興支援・安全安心広報隊活動」にも参加したりと地域の防犯活動の広報をしています。

災害ボランティアを行う選手たち
災害ボランティアを行う選手たち

一歩ずつ復興、北陸へ足を運んで

富山県では氷見市以外にも液状化や道路の陥没など多くの被害が残っており、ライフラインが元に戻るのは数年先になるようです。復興に向けて一歩ずつ進んでいます。

まだ被災の傷跡も残っている中で、観光や遊びの話をすることは大変心苦しいのですが、富山はハンドボールをはじめ、バレーボール、サッカー、バスケットボールなどの社会人チームがあります。富山県ふっこう割や北陸応援割などの旅行クーポンも配布されていますので、ぜひ富山をはじめ石川県、福井県、新潟県の海の幸、山の幸を味わいに来てください。

今回は氷見の特産品のブリを使った「ブリの漬け丼」を紹介します。新鮮な海の幸は良質の脂質であるDHAやEPAを豊富に含んでいます。

火を使わないメニューでもある漬け丼。ぜひ、お試しください。

管理栄養士・舘川美貴子