熱中症予防の水分補給について、よく質問されるのが「スポーツドリンクと経口補水液の違いについて」です。それぞれの特徴と利用シーンについて、おさらいしておきましょう。

スポーツドリンク

スポーツドリンクは清涼飲料水で、水分や糖質、ナトリウム、カルシウムなど電解質が含まれ、運動時に失われた水分や電解質の補給に適しています。脱水予防の観点として、糖質濃度は3~8%、食塩濃度は0.1~0.2%とそれぞれ適切な濃度の範囲となっており、気温が高い日、激しい運動で大量の汗をかいたときの水分補給に適しています。

ただ、製品により原材料や成分が違うため、成分表示を見て目的に沿ったものを選ぶことが大切です。スポーツドリンクのうち比較的糖質量が多く、エネルギー補給にも役立つものをアイソトニック飲料、糖質量が比較的少なく運動中により早く吸収されやすいものをハイポトニック飲料と言います。

経口補水液

経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は脱水症状から素早く回復するために、水分と電解質を細胞の内部まで浸透させる飲料となります。まさに「口から飲む点滴」です。食塩濃度が0.3%程度と高めで、糖質が低めに設定されています。

熱中症だけでなく、ノロウイルスなどの感染性腸炎や感冒による下痢、嘔吐、発熱を伴う脱水状態、高齢者の経口摂取不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態、発汗を伴う熱中症などといった軽度から中等度の脱水の状態に用いられます。具体的には、大量の汗をかいている、口の中や舌、脇の下が乾いている、身体が熱くなっている、ぐったりして活気がない、下痢や嘔吐、高熱などの症状が続いている、めまいやふらつき、動悸などの症状が挙げられます。

薄めたり混ぜたりせずに飲むのが基本

上記でも述べたように、経口補水液はスポーツドリンクに比べて塩分などの電解質濃度が高く、また水と電解質の吸収を速めるために糖質濃度が低い組成となっています。飲むと、スポーツドリンクは甘味をしっかり感じることができますが、経口補水液は塩味を強く感じます。

中にはスポーツドリンクの甘味が苦手で水で薄めたり、スポーツドリンクと経口補水液を混ぜたりして飲んでいる人もいるようですが、そうすると、そのドリンクが本来持つ意味や効果が果たせません。粉末タイプを利用するにしても、水で薄める分量を守るようにしましょう。

飲み過ぎのデメリット「ペットボトル症候群」

これらはいずれも多くの汗をかいたときや、脱水予防として使用するのが基本で、日常的に飲むものではありません。スポーツドリンクは糖質濃度が高い分、飲みすぎることで肥満や血糖値に影響があります。

飲みすぎると、耐糖能(血糖値を正常に保つためのグルコース処理能力)に異常が生じ、「ソフトドリンク(清涼飲料水)・ケトーシス」と呼ばれる急性の糖尿病を引き起こす可能性があります。これがいわゆる「ペットボトル症候群」です。スポーツドリンク、清涼飲料水を大量に飲み続けることによって、吐き気や腹痛などを起こし、進行すると意識障害や昏睡といった危険な状態(ケトアシドーシス)になることもあります。

経口補水液は、一度に大量に飲むことでナトリウムの過剰摂取になる可能性もあります。水分や電解質が不足していない健康な状態で大量に飲めば、塩分や糖分の摂りすぎになる可能性もあります。電解質の摂りすぎで下痢を引き起こし、脱水症状を悪化させることもあります。また、高血圧の方や腎臓・心臓などの治療をしている人は主治医に飲む量を確認することが必要です。

少し難しいですが、スポーツドリンクと経口補水液の違いを理解しましょう。

今回は、暑い日におすすめの「トマトとスイカとパインのミックスジュース」を紹介します。少し不思議な組み合わせですが、甘くおいしいジュースです。

スイカ、トマトなど夏の野菜は体を冷ます効果があります。果物や野菜には、汗で失われる水分やカリウムも多く含まれるので、積極的に取り入れていきましょう。

管理栄養士・舘川美貴子

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