6月~10月にかけて、食中毒のピークを迎えます。夏の暑い時期は特に、食品衛生に気を付けなければなりません。冬はノロウイルスによるものが多くなりますが、夏の食中毒はウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が原因になることが多くなります。

今回は黄色ブドウ球菌についてお話をします。

黄色ブドウ球菌とは

黄色ブドウ球菌は人や動物の傷口(特に化膿しているもの)をはじめ、手指・鼻・のど・耳・皮膚などに広く生息している常在菌で、健康な人の20~30%が保菌していると言われています。顕微鏡で見ると、ブドウの房のように集まっていることからこの名前が付けられました。

様々な食品が原因食となる可能性を持っており、おにぎり、お寿司、弁当、サンドイッチといった肉、卵、乳などの調理加工品や、ケーキなどの菓子類まで多岐にわたっています。素手で扱う手作り食品から、調理する人の「手」を介して食品が菌に汚染されることが多くあります。

熱に強い毒素エンテロトキシン

この菌は、食べ物の中で増殖するときにエンテロトキシンという毒素を作り、その毒素を食品と一緒に食べることで、食中毒を起こします。潜伏時間は30分~6時間(平均約3時間)で、主な症状は激しい吐き気・嘔吐・下痢・腹痛など。一般的には、高熱を伴うことはありません。

やっかいなのは、菌自体は熱に弱いものの毒素が熱に強く、100℃で20分加熱しても分解されないことです。酸素のない状態でも増殖可能で、多少塩分があっても毒素を作ります。つまり、毒素は加熱では破壊できないため、残った調理済食品の再加熱利用も避けましょう。

食中毒を予防するには

食中毒の3原則は

(1)つけない
(2)増やさない
(3)やっつける

です。

これらの対策は大前提として、さらに食品中で黄色ブドウ球菌がエンテロトキシンを産生しないように、食品の汚染や増殖を防ぐことが重要です。黄色ブドウ球菌に対する注意ポイントとして「十分な手洗い」があります。

(1)手指の手洗い、消毒は十分に
(2)手に傷がある人は調理をしない。調理する場合は手袋などを使用し、素手では調理しない
(3)食品は低温で保存して菌の増殖を防ぐ
(4)調理中に髪の毛や顔などを触らない

おにぎりやサンドイッチを作る時は、ラップや使い捨ての調理用手袋を使い、直接素手で触れないようにしましょう。お弁当を詰める時も素手ではさわらず、箸や使い捨ての調理用手袋などを使いましょう。「ちょっといいだろう」が重大なことになりかねないということです。

今回は「鶏肉竜田揚げおにぎり」を紹介します。おにぎりを作るには、「握る」「竜田揚げを盛りつける」「海苔を巻く」という3つの工程がありますが、素手で触らず、ラップや使い捨ての手袋を使用すると衛生的です。

竜田揚げは多めにつくり、おかずとして食べても良いですね。

管理栄養士・舘川美貴子