食中毒の原因となる細菌やウイルスは、実は身近なところに多く存在しています。今回は、鶏肉から多く発生する食中毒菌「カンピロバクター」についてお伝えします。

国内で年間2000人が発症、下痢・発熱など

カンピロバクター感染症は、主にカンピロバクター・ジェジュニという細菌が原因となるものです。年間300件、患者数2000人程度と、国内で発生する食中毒の中では、サルモネラ感染症とともに件数、患者数ともに多いものです。

カンピロバクターは、牛や豚などの家畜や鶏などの腸管に広く存在していますが、特に鶏の保菌率が高いといわれており、市販の鶏肉は高い確率で汚染されているという報告もあります。わずか数百個の菌数で発症し、発症までの潜伏期間は2~5日と他の菌より長い傾向があります。

主な症状は、下痢、腹痛、発熱、全身倦怠感などで、特に下痢は1日に何度も水様便や泥状の便などがみられます。また、症状が治まっても、排菌が数週間続くこともあり、人から人への2次感染に注意が必要です。

感染経路としては、汚染された食品が原因となるものと、感染者やペットの糞便が原因となるものがあります。詳しく見てみましょう。

汚染された食品が原因となる経路

汚染された食品が原因となる経路としては次のものがあります。

(1)汚染された鶏肉や牛レバーなどの食品を生食で、または十分な加熱がされていないものを食べた場合
(2)汚染されたまな板、ふきん、ボウルなどの調理器具や手指を介して、汚染された食品を食べた場合

これら防ぐため、次のことを意識し、対策することが必要です。

(1)肉類を生で食べることは控え、十分に加熱したものを食べる(75℃、1分以上)。特に、鶏肉は中まで火が通っていることをきちんと確認し、半生などの状態では食べない。
(2)生肉を扱った後は、手洗い、手指消毒をしてから他の食品を扱うようにする。
(3)肉と他の食品(特に加熱調理後の食品)は、処理や保存する調理器具や容器を分ける。
(4)生肉に使用した調理器具は洗剤で洗い、熱湯や次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)、消毒用エタノールなどを用いて消毒する。

感染者やペットの糞便からの経路

感染者やペットの糞便が原因となるケースもあります。

(1)患者の糞便処理後、手洗いや手指の消毒が不十分なことにより、汚染された手指を介して接触感染する場合
(2)間接的な接触感染として、汚染された個所(患者が用便後などに触れたドアノブやテーブルなど)に触れることで、手指が汚染されてしまう場合
(3)ペットに触れ合うことで手指が汚染され、感染する場合

これらの対策としては、次のことが挙げられます。

(1)帰宅時や料理の前や排便の後は、きちんと手洗いし、手指を消毒。
(2)トイレ内、特に水洗レバーや便座、ドアノブなどは消毒用エタノールなどでこまめに消毒。感染者が使用した後のトイレはしっかりと消毒をしましょう。
(3)ペットに触った後は、手洗いと手指を消毒する。

トレーニングを無駄にしないために

これから鍋などで鶏肉を多く食べる時期にもなります。調理の際、加熱は十分にして、食中毒を予防しましょう。

食中毒にかかってしまうと、せっかくのトレーニングが無駄になり、復帰にも時間がかかります。食事はおいしさも大切ですが、衛生面の意識も忘れずに。暑い夏だけでなく、冬場も油断禁物です。

今回は、ヨーグルトを使って鶏むね肉を柔らかく食べられる「鶏のみそ漬け焼き」を紹介します。フライパンで加熱する際はしっかり中まで火を通し、下処理で使ったまな板や調理器具は洗剤でしっかり洗い、衛生管理にも気を配ってくださいね。

管理栄養士・舘川美貴子