下痢や嘔吐(おうと)、発熱を引き起こし、重症化の危険もある食中毒は、梅雨の時期や暑い夏だけのものではありません。涼しくなると気を抜いてしまいがちですが、食中毒は一年中通して発生しており、10月は「細菌」や「寄生虫」を原因とするものが多いのです。秋以降に多い食中毒を紹介します。

カンピロバクター

鶏肉など加熱不十分な肉類に多い細菌で、これから多くなる鍋料理の時には注意が必要です。また、唐揚げなど塊肉を料理する場合、表面は火が通っても、中までなかなか火が通りにくいため、加熱不十分になるケースがあります。塊肉を料理するときは中心温度を測り、十分に加熱されているか確認することが大切です。

ウェルシュ菌

牛、豚、鶏など肉類が主な感染源です。カレーやシチューなど煮込み料理の作り置きが原因になることが多く、芽胞を作ると熱に強いため、再加熱しても死滅しません。調理したら早めに食べ切る、保存する場合は10~55℃の増殖しやすい温度帯を避け、小分けして急速冷却すると良いでしょう。

サルモネラ菌

卵や鶏肉に多く寄生する菌で、最近では卵の表面は十分洗浄されているものの、感染した鶏が産んだ卵の中に存在することも知られています。対策としては、熱に弱いので十分に加熱することです。手作りマヨネーズやティラミスなど加熱しない卵料理は、作ったらその日のうちに食べ切りましょう。

アニサキス

寄生虫の一種で、幼虫はサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生しています。寄生している魚介類が生きているうちは内臓に存在しますが、死亡すると筋肉に移動します。生の魚を調理する時は新鮮な魚を選び、素早く内臓を取り除き、内臓は生で食べないようにしましょう。冷凍(-20℃で24時間以上)や加熱によって死滅します。

ノロウイルス

冬季に最も多い食中毒で、アルコールでは予防できないため、塩素系漂白剤が有効です。ノロウイルスに汚染された水に存在するカキなど、二枚貝に付着したウイルスを摂取することで、小腸粘膜で増殖します。そのため、少量の摂取でも発症します。また、感染者の便や吐しゃ物から感染することもあるため、トイレの後の手洗いが重要です。

食中毒対策としては、新鮮な食材を使用すること、調理前に十分に手洗いをすること、食材をしっかり洗うことが大切です。加熱するときは、基本的には中心部まで75℃以上で1分以上、ノロウイルスは85℃以上で90秒以上加熱してください。保存は10℃以下に素早く冷却して冷蔵庫に入れることが大切です。

参考:食品衛生の窓 東京都の食品安全情報サイト

【管理栄養士・今井久美】