前回のコラムで、糖質にはでんぷん、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロースといった種類があるとお伝えしました。今回は、早急な疲労回復のためには、どのタイミングでどの種類の糖質を選ぶと良いのかを説明していきます。

基本は「食品」から糖質をとる

まず、通常の生活において糖質(炭水化物)を補給するなら、栄養補助食品やサプリメントといった糖質を製品化したものよりも、穀類、全粒穀物、野菜、フルーツなどの食品からとって欲しいと思います。食品には糖質をはじめとするエネルギー源や主要栄養素だけでなく、さまざまな微量栄養素、ポリフェノール、食物繊維のほか、炎症の軽減や免疫耐性の促進、神経保護強化を通じてプラスの効果が期待される生物活性化合物が含まれるからです。食事をしっかり摂っていれば、気付かないうちに色々な栄養素を摂れることになります。

ただし、食品から摂る場合、色々な栄養素が含まれる分、消化吸収される時間もかかります。逆算すると、運動前なら3時間前、運動後はなるべく早い時間帯に、消化の負担が少ないものを食事として摂るのがおすすめです。

急速回復の場合は「加工品」を利用も

しかし、試合が続いたり、運動後すぐに動かなければならなかったりすることもあります。疲労を回復し、使った分のエネルギー源を補給するために、速やかにグリコーゲンを再合成する必要がある状況では、精製糖、でんぷん、加工されたスポーツ栄養製品のように胃から早く排出されるもの、つまり消化の早い食品を摂取することも推奨されています。試合直後にエネルギーゼリーを口にするのは、早急な疲労回復につながるわけですね。

複数の糖質を組み合わせるのも効果的

また、糖質の種類を組み合わせて摂取すると、糖質を吸収する速度が向上することが報告されています。糖質を腸で吸収するために、運ぶ役割をするタンパク質の種類が異なるため、骨格筋でグリコーゲンを使う速度も異なると言われています。

報告によると、グルコース(ブドウ糖)とスクロース(ショ糖)、またはマルトデキストリン(でんぷんを加水分解し精製したグルコース)とフルクトース(果糖)の組み合わせは、単一の糖質を摂取する場合と比較して、糖質を吸収する速度が向上するとのことです。補食で糖質を補給するときなどは、おにぎりだけよりもオレンジジュースやゼリー飲料、バナナなどを組み合わせる方が良いでしょう。

市販されているゼリー飲料やスポーツドリンクも、メーカーや商品によって糖質の種類が異なります。一般的には複数の糖質が含まれているので、商品表示でどのような糖質が使用されているかを確認してください。飲み比べてみて、好みの味付けか、エネルギーの持続感やコンディションの状態がどうかを確認し、運動中のエネルギー補給として体調にあったものを摂取できると良いでしょう。

今回は、補食にもおすすめの「厚揚げ入り太巻き」を紹介します。厚揚げと野菜(ニンジン、水菜)、チーズを具にして太巻きにしました。ご飯から糖質、厚揚げからタンパク質、さらに野菜からビタミンがとれます。片手で食べやすく、お弁当にも適しています。

※参考文献:
・スポーツ栄養学ハンドブック ダン・ベナードット著 寺田新訳 東京大学出版会 2021
・Graeme L. et al. Food First Approach to Enhance the Regulation of Post exercise Skeletal Muscle Protein Synthesis and Remodeling Sports Medicine (2019) 49 (Suppl 1):S59–S68

管理栄養士・田澤梓