選手全員のフィジカル底上げへ

全国大会出場は、選手権に24回(優勝4回)、インターハイに12回(同2回)、全日本ユースに4回(同2回)、国体に12回(同2回)。中山雅史や長谷部誠ら多くの日本代表やJリーガーを輩出しているが、最近はやや低迷。昨年のインターハイには出場したが、サッカー王国静岡で県大会を勝ち抜くのが難しい。

全面人工芝の藤枝東グラウンド
全面人工芝の藤枝東グラウンド

小林公平監督(35)はU-18世代の全国規模のリーグ戦、プレミアリーグなどで全国各地の強豪チームと対戦するたびに「体格的に差がある」と感じており、栄養の専門家に一任することを決断した。

厳しい表情で練習を見守る小林監督
厳しい表情で練習を見守る小林監督

「自分から食事の話をすると、『練習後、できるだけ早く食べろ』『たくさん食べろ』と一律的な声かけしかできないし、強制になってしまう。選手1人1人悩みや目的も違うわけで、中野さんにお任せして個々の対応をしてもらったことで、選手の意識も高まり、体つきも変わってきた」と成果を口にする。

ミニゲームで激しくプレーする選手たち
ミニゲームで激しくプレーする選手たち

特に筋肉系のケガは減った。中野さんと、藤枝市のメディカル施設「エムエスマイスター」から派遣されるトレーナー、藤枝東OBで構成される内科、整形外科のドクターが連携し、選手全員のフィジカルの底上げを図っている。

保護者にも情報共有、連携強まる

それまで「何かしてあげたいが、何をどうしていいか分からない」といった保護者の声にも応える形になった。保護者も加えたSNSの「食トレグループ」を作り、指導内容や選手の様子を文字、写真、動画とともに共有し、見学、試食できる日も設けている。「食卓での会話が増えた」と家庭でのコミュニケーションが強まったことで、保護者の関心も強まっている。

栄養指導をする中野ヤスコさん
栄養指導をする中野ヤスコさん

この日は保護者から提供された桃、干しシイタケを食材に使用。かつお節など地元企業からの提供も増えてきた。

毎週末、プレミアリーグなどの試合をこなしながら、選手たちは11月からの選手権県大会決勝トーナメントに照準を合わせる。「このようなことをやっていただき、結果につながるようにしたい。感謝の気持ちを持って頑張りたい」と斎藤仁選手(3年)は力強く話す。

藤枝市は「サッカーのまち」。卒業生や後援会だけでなく、地元住民にとって藤枝東サッカー部は誇りでもある。藤色のユニホームを再び全国の頂点に…。「捲土(けんど)重来」に向けて、サポートは続いていく。

小学校の先生辞めて食の世界に

食トレの献立を作り、メニューのコンセプトを話す加藤さん(左)
食トレの献立を作り、メニューのコンセプトを話す加藤さん(左)

藤枝東の食トレ献立は、加藤扶美さんが作っている。元々は小学校教諭だったが、藤枝東サッカー部OBで現在、筑波大2年の長男太一君の食事作りを通してスポーツ栄養に目覚め、転職。くるみキッチンプラスのスタッフとして、中野さんから実践的な指導を受けながら、初めての調理の現場で働いている。今春、アスリートフードマイスター1級の資格を得て講師役も務め始めた。「ご飯の作り方にちょっと気を付ければ、こんなにも変わるんだということがうれしくて、“ビーン”と来てこっちの道に来てしまいました」。ここにも力強いサポーターがいた。

県内外から多くのチームが「食トレ」

この夏、くるみキッチンプラスには県内外から多くのチームが訪れ、「食トレ」を行った。ビジネスホテルの1階に位置すること、スポーツ栄養を考えた食事がとれること、ヘモグロビン推定値や体組成の測定器があることから、宿泊を伴った遠征で利用し、体作りに役立てているチームが増えている。藤枝市が食トレ最前線の基地になっている。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】