女性アスリート特有の食生活の問題点の1つとして、トレーニング量が多いため、食べる量が追いつかず、エネルギー摂取量が足りなくなり、結果として月経異常や無月経、果てには摂食障害に陥る選手がいる。2日に行われた日本摂食障害協会主催のシンポジウム「世界摂食障害アクションディ2019」で、大妻女子大学家政学部食物学科の小清水孝子教授が発表した。

Low energy availability(利用可能エネルギー不足)、視床下部性無月経、骨粗しょう症を「女性アスリートの三主徴」と呼ぶ。アメリカスポーツ医学会が発表したこれらの問題は、継続的な激しい運動トレーニングにより、それぞれの発症が相互に関連している。

「糖質は太る」の思い込み

energy availability(EA)が足りない、つまりエネルギー消費量に対し、摂取量が極端に足りない原因は「過度の減量」によるものだけでなく、「トレーニング量が多い」ことによって、食べる量が追いつかないことにもある。

シンポジウムで発表する大妻女子大学家政学部食物学科の小清水孝子教授
シンポジウムで発表する大妻女子大学家政学部食物学科の小清水孝子教授

そのケースで最近顕著なのが「糖質抜き」。小清水教授は「最近の選手は、肉、魚、卵などのタンパク質は十分に摂れているんですが、糖質を極端に制限してきます」と説明する。「糖質は太る」と思い込み、ご飯やパンなどの主食を食べない。運動量に見合った糖質量を摂らないため、EAが低い選手が増えているという。

EAが低いもう1つの原因は「過度の減量」。続けるうちに基礎代謝や筋肉量も減り、ある時から体重が落ちなくなる。するとさらに食事量を減らし、以下のような偏ったものになる。

日常的に極端な小食
欠食
重さで食べる(おにぎりよりもポテトチップス、といったように重量の軽い食品しか食べない)
短時間に急速に体重を減らそうとする
サプリメントやダイエット食品しか食べない
○○しか食べない、△△ばかり食べる
水分制限
など。

ここまでに陥る要因、背景はさまざまで一概には言えないが、指導者からの体重に関するプレッシャー、ライバル(他選手)に何とかして勝ちたいといった心理的問題も少なくない。複雑な要因が絡み合い、簡単に改善できないのもこの問題の難しいところだ。

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