中学受験で2年休養、異色の経歴

トップスイマーの中では異色の経歴。「その間、少し太りました。今考えると、そこで休んで(心身ともに)疲弊しなかったのが良かったのかもしれない」。その言葉通り、第二次性徴の前にエネルギーを蓄えることができたのだろう。

都内の中高一貫校に通いながら、再びセントラル岩槻に通い出した頃、成長のピークが訪れる。148センチだった身長は中学3年間で20センチも伸び、168センチに。比例するように競技成績も伸びて、全国的に注目されるようになった。

練習中に笑顔を見せる伊藤華英(2004年4月19日撮影)
練習中に笑顔を見せる伊藤華英(2004年4月19日撮影)

高校1年の秋に、練習拠点を千葉・市川市のセントラルスポーツに移し、寮生活を始めた。ソウルオリンピック金メダリストの鈴木大地氏(現スポーツ庁長官)を育てた鈴木陽二コーチの元で、英才教育を受けるためだ。

しかし、そこで思わぬ試練が待ち受けていた。いわゆる「普通のご飯」だった寮の食事が食べられない。そのとき初めて「自分が“箱に入っていた”こと、管理されていたことを知った。タフさがなかった」。厳選された食材で食べられるものだけ、好きな味付けで出されていた食卓に慣れていた伊藤さんに、食の苦労が訪れた。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】

◆伊藤華英(いとう・はなえ) 1985年(昭60)1月18日、埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。東京成徳大中-東京成徳大高-日大。背泳ぎ選手として活躍。世界選手権は01年から4大会連続で入賞し、08年北京オリンピック100m8位。左膝痛などから10年に自由形に転向し、12年ロンドンオリンピックに出場した。同年の国体後に引退し、早大学術院-順大大学院。現在は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のメンバーとして活動。日大非常勤講師も務める。