激しいトレーニングに加え、極端な減量によってBody mass index(BMI)が18.5を下回り、体脂肪率が低くなって「女性アスリートの三主徴」にあるLow Energy Availability(利用可能エネルギー不足)になる、心理ストレスなどから、性腺機能低下症を生じることも多い。初潮がなかなか起こらない、月経異常、運動性無月経、排卵障害、女性ホルモンである黄体形成ホルモンが分泌されないなどで、陸上・中長距離、新体操、体操、バレエ、競泳、飛び込み、フィギュアスケートなどのジュニア選手に多く見られるという。

 無月経状態が長く続くと、骨を強くするエストロゲンという女性ホルモンが出ないため、疲労骨折、若年性骨粗しょう症になってしまう。鈴木教授は「女性ホルモン値と骨カルシウム量はシンクロしています。骨量を上げられるのは思春期だけです」と語気を強めた。

政策研究大学院大保健管理センターの鈴木眞理教授
政策研究大学院大保健管理センターの鈴木眞理教授

相談できる相手がいない

 体が異常をきたしているにもかかわらず、だれにも相談できないアスリートもいる。男性指導者に言いづらかったり、競技者なら無月経が当たり前といった風潮があったりするのも現実。指導者の知識不足から、アスリートがこのような問題を抱えていること、その重大性を認知していないこともある。

 優秀なアスリートであればあるほど、その完璧主義と強迫性から摂食障害の有病率が高い。真面目に努力するアスリートは指導者の発言や態度が発病リスクに影響するとも言われる。

 いまやダイエットストレスは小学生にまで及んでいる。「人を飢餓状態に置くと、逆に脳内は食べ物のことばかり考えるようになり、人柄や社会性まで変えてしまう」と鈴木教授はゆがんだ食行動の怖さを語る。しっかり食べることの大切さを、幼少時からすり込む必要がある。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】