みなさんは「カヌースラローム」という競技をご存知でしょうか。川を下りながらあちこちに配置されているゲートをくぐり、その速さと正確さを競うスポーツです。2016年のリオ五輪で、羽根田卓也選手(ミキハウス)が日本人初の銅メダルを獲得したことで知名度が上がりました。

この競技で次世代のホープとして期待される山本嶺選手は、昨年春にカヌーの名門・駿河台大学を卒業し、現在は株式会社極洋で競技を続けています。レース後は動けなくなるほどのハードさを誇り、時間や天候によって刻一刻と変わる川の流れを読む頭脳も求められるカヌースラローム。この競技で結果を出すために、山本選手はどのような工夫をしているのでしょうか。

「2018カヌースラロームジャパンカップ・キョクヨーシリーズ」最終戦の山本嶺選手
「2018カヌースラロームジャパンカップ・キョクヨーシリーズ」最終戦の山本嶺選手

-競技を始めたのはいつですか?

山本 中学1年生からです。小さいころから、アウトドア好きの両親に連れられてカヌーに乗る機会が多く、その流れで自然と「やりたい」と思うようになりました。

-競技の魅力とは?

山本 自然の中で行う競技なので、レースを行う川の状態は天候によって変化します。その時々の状況に臨機応変に対応し、頭を使ってプレーするのが魅力だと思います。

-厳しさは?

山本 1レースの消費カロリー量は、陸上の800メートルとほぼ同じくらいだそう。レースが終わった直後は、息があがり動けないくらい疲れています(笑)。

カヌーを身体の一部のように操る山本嶺選手
カヌーを身体の一部のように操る山本嶺選手

-競技に必要な能力は?

山本 腕で漕ぐイメージがあるかもしれませんが、一番大切なのは体幹です。急流の中で姿勢を保ち、思った通りにカヌーを操作しなければならないからです。競技中は、3メートルほどのカヌーの頭からお尻までが、すべて自分の体になっているような感覚。微かな水の流れを感じて、操作します。

競技を継続するための努力

-極洋に入社された経緯は?

山本 カヌーを続けることを前提に就職活動を行っていたのですが、なかなか理解が得られず苦戦していました。最終面接で「カヌーを続けたい」と話したら、落とされたことも(笑)。そんな中で、スラロームの国内大会「ジャパンカップ」の冠スポンサーである極洋にご縁をいただき、入社しました。

-現在の生活スタイルは?

山本 週6~7日、多摩川上流で練習をしています。1回1~2時間の練習を1日に2~3回行うのが基本。日が落ちたら、母校のナイター施設を借りて練習します。6時に起床、9時から練習、20時に帰宅し、23時ごろに就寝するというスケジュールです。

カヌーについて語る山本嶺選手
カヌーについて語る山本嶺選手

-入社後はどんな変化がありましたか?

山本 競技に集中できる環境を作っていただけているおかげで、体格がすごく変化しています。入社時に作ったスーツがそろそろ入らなくなりそうです。

-食事はどうやってとっていますか?

山本 節約のために、朝食と夕食は自炊が基本です。合宿中も調味料や鍋を持ち込んで自炊しています。練習後に夕食をつくるのはけっこうしんどいので、簡単に作れる肉と野菜中心の献立に、ごはん、納豆ということが多いです。

基本は自炊をするという山本嶺選手
基本は自炊をするという山本嶺選手

-料理は以前から得意だった?

山本 大学時代は寮で食事が出ていましたが、実家に帰るとよく料理を作らされていたので、苦手ではなかったですね。就職するときには、母から「鶏手羽元のさっぱり煮」などレシピを教えてもらい、あとはレシピサイトのお世話になっています。

-ジュニアアスリート時代の「食」の思い出は?

山本 好き嫌いなく、出されたものはなんでも食べていました。高校のときは1日7食。お弁当とおにぎり3個を学校に持って行って、ちょこちょこ食べていました。

-ところで、勤務する極洋は、サバやイワシなどの缶詰も販売する会社です。これらの缶詰は食べますか?

山本 いえ、あまり食べません。缶詰って食べ方がよくわからなくて……。

そんな山本選手のために、次ページでは、女子栄養大学名誉教授の三浦理代先生と、極洋商品開発部の相川公子さんにご登場いただき、アスリート向けの「缶詰レシピ」を紹介してもらいます。今回は特に、手頃な価格ながら、栄養的にも優れている点で大きな注目を浴びているサバ缶を使った料理です。