私たちの夏の食卓で大活躍するのが、素麺やお蕎麦、冷やし中華などの「冷たい麺類」。パスタの国、イタリアではさぞかし冷製パスタが大人気…と思いきや、もともと冷たいパスタを食べる習慣がなく、冷製パスタが生まれたのは、なんと1990年代になってから。極細のパスタに冷えたソースと和える料理がレストランで誕生し、アメリカや日本に広まっていきました。そのため、イタリアの家庭では冷たくしたパスタはあまり食べず、レストランでいただくちょっとオシャレな料理として存在しているようです。

 なぜイタリアの家庭では、パスタを冷たくして食べなかったのでしょう? パスタの茹で方には、アレコレこだわりのあるイタリアの人々。茹でたてのパスタを水で洗う、なんて、パスタの美味しさをそぎ落としてしまうような食べ方は耐えられなかったのです。

 意外にも思われるでしょうが、日本人の習慣に置き換えてみましょう。炊き立てホカホカのご飯を水で洗って食べる…なんて、日本人には言語道断! この思いと一緒なのです。

 では、夏のイタリアの食卓にはどんな料理がのぼるのでしょうか? 暑さで食欲が落ちてしまうのは万国共通。たっぷりの野菜にお米やパンといった炭水化物を合わせ、酸味を利かせたさっぱりした味つけの夏バテ防止料理があります。

硬くなったパンを再生する夏の一皿

パンツァネッラ
パンツァネッラ

 今回紹介するのは、中部イタリアの夏の一皿。硬くなってしまったパンに水を含ませて食べやすくし、たっぷりの野菜と合わせる「パンツァネッラ」という料理です。

 トスカーナ地方で食べられているこの料理は、この地方特有の塩を加えていないパンが乾燥してしまったものを、再び食べやすくするために考えられたものです。

 キリスト教徒であるイタリア人にとって、主食であるパンはとても重要な食べ物。昔むかしのイタリアでは、パンが硬くなってしまったからといって捨ててしまうことはせず、スープに加えたり、煮込んでみたり、パン粉にしたりとさまざまな方法で、しかも美味しく食べられるように“再生”された料理やお菓子がたくさん考案されていました。

 日本の家庭で再現するには、バゲットなどのシンプルで硬めのパンがオススメです。水につけてやわらかく戻すと、もろもろと崩れて、野菜にとても絡みやすくなります。

たっぷりの夏野菜で熱中症対策、運動後のリラックスを

 季節の夏野菜は、好みのものを数種類加えて作りましょう。特にキュウリやセロリ、レッドオニオンなど、食物繊維やカリウム、水分の豊富な野菜を加えることで、運動後の水分やミネラル補給にも役立ちます。また、セロリ特有の香り成分には、食欲増進効果やイライラした神経を抑える力もあります。タンパク質が不足しがちなサラダ類には、ツナやハム、卵を少し加えると、ぐっとバランスがアップします。

 夏野菜は体を冷やす、とよく言われ、そればかりを食べすぎるのは禁物ですが、夏の暑い最中、上がった体温を自然に下げるので、熱中症対策には有効な食材のひとつといえます。上手に取り入れて、夏の暑さを乗り切りましょう。