以前のコラムで、「自律神経と消化の関係」についてお伝えしましたが、言い換えると、人間は気分やストレスなどの状態によってもおなかの状態が変わってきます。自律神経が関係しているからです。

胃腸を動かせるためには

自律神経には大きく分けて、交感神経と副交感神経があります。交感神経は、活発な日中を中心に心拍が上がるなど、活動的なときに優位になります。一方の副交感神経は、夜の時間帯を中心に、ゆっくり休めるときに優位になる神経です。

食べ物を消化するときには、胃腸が動かないとなりません。「動く」と聞くと、交感神経のように思われがちですが、「胃腸が動く」ときは副交感神経が優位な状態なのです。つまり、リラックスできていないと消化吸収がうまくいかないのです。

次のような経験をしたことはありませんか。

緊張して、食べ物が喉を通らない、食べる気がしない
立ち食い、早食いなど落ち着かない場所で食べたとき、おなかの調子が悪くなる

緊張しているときや落ち着かないときは、気が張っていて交感神経が優位になっている状態。このときは、胃腸が動いていないのです。アスリートが緊張する試合前などは胃腸が働かないため、消化がうまく進まないということです。

消化促進させるための環境とは

楽しい環境やおいしいという感情はリラックスにつながります。家族や気の合う仲間と楽しく食べる、「おいしい」と声に出すことも効果的です。急いでいるときや緊張しているときでも一つ、深呼吸してから肩の力を抜いて、よく噛んで食べるように心がけることで消化が促されます。

また、「おいしくないものを無理やり食べる」ことも、あまり良いことではありません。まずい!と体が反応すると緊張が走って、交感神経優位になってしまいます。苦手な人と緊張しながら食べるときも、同じようなことが起こります。

「おいしい」と言葉に出すことも

食事は、摂取する内容やタイミングも大切ですが、同時に「環境」や「気持ち」も重要です。消化は、摂った栄養を使う第一歩。たとえ体に良いと言われるものを食べても、消化されなかったら元も子もありません。

思考や感情は、脳から体に信号が送られます。おいしいものを食べることは、生理学的にも重要なのです。「環境や気持ちが栄養摂取には大切」ということを知っていると、さらに強い体を作ることができるでしょう。

今回紹介するレシピは、今が旬のジャガイモを使った料理「鶏肉とジャガイモのニンニクしょうゆ炒め」です。ニンニクだれの香りと味が食欲をそそります。ぜひ、「おいしい」と声を出して食べてみてください。

管理栄養士・園部裕美